2025 3.24 mon., 3.25 tue., 3.26 wed.
THE BRIAN BROMBERG ACOUSTIC TRIO with TOM ZINK & CHARLES RUGGIERO
artist BRIAN BROMBERG
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
ロサンゼルスを拠点とする"ベースの求道者"、ブライアン・ブロンバーグが最新作『ラファロ』を携えて来日中です。エレクトリック・ベースや高い音域を持つピッコロ・ベースを用いたスムース・ジャズ的な演奏でも人気を誇るブライアンですが、2006年以来のブルーノート東京公演にあたる当ステージはピアノ・トリオ編成によるモダン・ジャズ。中指や小指をも駆使した鮮やかなプレイによって、アップライト・ベースのかっこよさや逞しさをたっぷり味わわせてくれます。
『ラファロ』とは、"ジャズ・ベースの革命児"スコット・ラファロのことです。スタン・ゲッツ、オーネット・コールマン、ビル・エヴァンスなどのバンドに在籍した奏者で、1961年にわずか25歳の若さで自動車事故のため他界しています。ブライアンはもちろん長年にわたって彼を敬愛しており、『ラファロ』は満を持して取り組んだ一作といっていいでしょう。また、ブライアンは1980年ごろスタン・ゲッツのバンドに在籍していたので、ラファロと彼とは同バンドで先輩・後輩の関係にあたります。
バンドスタンドには左からピアニストのトム・ジンク、ブライアン、ドラマーのチャールズ・ルッジェーロと、『ラファロ』と同じメンバーが位置します。トムはブライアンと30年以上にわたって共演を続け、シェリル・ベンティーン(マンハッタン・トランスファー)やアン・ウォルシュら歌手とのコラボレーションでも知られる奏者。初来日となるチャールズはヴィニー・ルッジェーロ(マンジョーネ・ブラザーズやスライド・ハンプトンのバンドで活動)の愛息で、スティーヴ・ガッドの指導を受けたこともある中堅です。近年ではケニー・Gのアルバム『New Standards』にも参加していました。
ラファロが自らのバンドを率いることなく亡くなったということもあるのでしょう、レパートリーは彼がビル・エヴァンス・トリオの一員としてレコーディングしたことがあるナンバーを中心に構成されました。アレンジ面にはいうまでもなく、ブライアンたちの創意工夫が凝らされています。『Portrait In Jazz』収録曲で言いますと、「Autumn Leaves」はぐっとテンポを落としてブルージーに奏でられ、「What Is This Thing Called Love?」ではエヴァンス・ヴァージョンと同じイントロを用いながらも、その後はいっそうワイルドに発展し、エンディングではテーマ・メロディに戻らず「Hot House」(この曲のコード進行を基にタッド・ダメロンが作曲)の一節を奏でます。「Waltz For Debby」も、この曲を演奏するときに誰もがやりそうな"ピアノと呼吸を合わせて半音で降りてくるベース・パート"を避け、サンバ風の乗りを持つ展開に衣替えされていました。ブライアンは「Nardis」、「Solar」などいくつもの曲でテーマ・メロディを奏でるとともに(時にトムとの一糸乱れぬユニゾンで)、全曲で聴きごたえたっぷりのアドリブも披露。タッピング的な奏法や重音も交えながらの弾きっぷりには華があり、音程の良さ、音色のキレも抜群なので、"ベース・ソロってこんなに楽しいものだったのか"と、こちらの喜びは高まるばかりでした。
不滅の名曲が持つ輝き、伝統的なジャズへの敬意を伝えると共に、マニアックな喜びも運ぶブライアン・ブロンバーグ・トリオの公演。ジャズに関心のある音楽ファンであれば引き込まれること間違いなしのライヴは、本日まで行われます。
(原田 2025 3.26)
Photo by Takuo Sato
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【LIVE INFORMATION】
THE BRIAN BROMBERG ACOUSTIC TRIO
with TOM ZINK & CHARLES RUGGIERO
2025 3.24 mon., 3.25 tue., 3.26 wed.
coming soon