2025 4.25 fri., 4.26 sat., 4.27 sun.
JOEL ROSS' GOOD VIBES
artist JOEL ROSS
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
絶好調を更新するヴィブラフォンの魔術師、ジョエル・ロスがただいま来日中です。24日には恵比寿・BLUE NOTE PLACEで馬場智章がおこなっている名物企画「BaBaBar」に参加しましたが、昨日からは場所をブルーノート東京に移し、自身のグループ"グッド・ヴァイブス"を率いてのライヴが開催されています。彼が自身のグループでここに登場するのは約5年半ぶり、まさに快挙です。
メンバーは向かって右からジェレミー・ダットン(ドラムス)、カノア・メンデンホール(ベース)、ジェレミー・コレン(ピアノ、19年公演にも同行)という、誰もが大変な気鋭たち。つまり最新アルバム『Nublues』や2020年作品『Who Are You?』のキー・メンバーがバンドスタンドに集まった形です。途中でジョエルによるメンバー紹介がありますが、その間も音が途切れることはなく、一種のメドレー形式でステージは進みます。それぞれの楽曲があまりにもスムーズに連続演奏された結果、まるでひとつの壮大な組曲を味わった気分になり、メンバーがステージからおりた後もしばらく音の余韻が体内に渦巻いているという感じでしょうか。快い緊張感を保持したまま長時間を疾走するプレイに、私は1967年のマイルス・デイヴィス・クインテットのヨーロッパ・ツアーのライヴ音源を思い起こしました。
ステージは、ヴィブラフォンという楽器の持つ香り高さをふりまくかのようなジョエルの無伴奏イントロダクションから始まりました。やがてそこにリズム・セクションが加わって、「Home」(アルバム『Who Are You?』収録)が提示されます。ジョエルが2本のマレットでヴィブラフォンの全鍵盤を叩きつくすようにプレイした後、また別の炎がコレンのアドリブ・ソロから立ち上がります。軽やかで起伏に富んだダットン、創造的なベース・ラインを紡ぎ出すカノア、見事だなあと思っていると、演奏はいつしか「Barry」、「Trinity」と移り変わり、そこからセロニアス・モンクの古典的楽曲「Evidence」に突入しました。『Nublues』でもカヴァーされていたAABA形式のナンバーですが、B部分にあたるサビ(ブリッジ)を改めるとともに、A部分のスタッカート気味というかブツブツと音が切れる箇所にも新たな視点が加わっていて、つまりは徹底的にジョエルのセンスに貫かれた"Evidence変奏曲"なのです。セロニアス・モンクの時代はテーマ・メロディ→アドリブ→テーマ・メロディという展開が一般的でしたが、ジョエルたちはテーマ部分を再現せずに次のナンバーへと移ってゆきます。
腕前の確かな人たちが操縦する、どこへ案内されるのかわからない、しかし無類にわくわくさせられる音楽の宇宙船に乗り込んでいる------そんな高揚感が彼らの公演にはあります。グッド・ヴァイブスのライヴは明日27日まで行われますが、全セットともスリリングな体験を味わわせてくれることでしょう。また28日、ジョエルは石若駿、井上銘、渡辺翔太&マーティ・ホロベックの公演にもスペシャル・ゲストとして登場しますので、こちらも楽しみです。さらに5月13日と14日、ジョエルは、今度は"マーキス・ヒルfeaturing ジョエル・ロス、ケンドリック・スコット&マイカ・コリアー"公演のメンバーとしてブルーノート東京に戻ってきます。
(原田 2025 4.26)
Photo by Takuo Sato
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【LIVE INFORMATION】
JOEL ROSS' GOOD VIBES
2025 4.25 fri., 4.26 sat., 4.27 sun. ブルーノート東京
石若駿、井上銘、渡辺翔太&MARTY HOLOUBEK
with special guest JOEL ROSS
2025 4.28 mon. ブルーノート東京
MARQUIS HILL
featuring JOEL ROSS, KENDRICK SCOTT & MICAH COLLIER
2025 5.13 tue., 5.14 wed. ブルーノート東京
coming soon