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KENNY BARRON TRIO @COTTON CLUB

artist KENNY BARRON

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

親しみやすさ、スリル、ノリの良さ、格調の高さ、そのすべてを兼ね備えたジャズ界屈指のユニットがただいま来日中です。ケニー・バロン(ピアノ)、北川潔(ベース)、ジョナサン・ブレイク(ドラムス)からなるケニー・バロン・トリオのステージです。バロンの80歳を記念して開催された2023年の公演から早くも2年、まさしく待望の再登場といえましょう。ブルーノート東京4デイズに先立ち、先日コットンクラブ公演が行われましたが、20年近く続く不動の顔ぶれによる、まさに"阿吽の呼吸"というしかない演奏ぶりに、超満員のクラブは大いに沸きました。

バンドスタンドには左からブレイク、北川、バロンの順に位置します。ドラム・セットはシンバルもタムもほぼ同じ高さに設置されており、それとは別にちょっとハートの形に似たシンバルがぶら下げられているという、ブレイク独自のものです。スタンダード・ナンバー、セロニアス・モンクなどジャズメンの書いたオリジナル曲、ブラジリアン・チューン、そしてリーダーの書きおろしと、バロン・トリオのレパートリーは多岐にわたりますが、コットンクラブ公演のファースト・セットはバロン自身のオリジナル曲を中心に構成。卓越した作曲家でもある彼の旋律センスがあふれる魅力的な自作自演の数々に、私は胸のすくような気持を覚えました。

オープニング・ナンバーは愛らしいワルツ「Lullabye」。1986年のアルバム『What If』収録ヴァージョンではジョン・スタブルフィールドのサックスとウォレス・ルーニーのトランペットがフィーチャーされていましたが、バロン自身のピアノによって奏でられるメロディ・ラインもまた、格別です。徹底的に軽やかなブレイクのブラッシュ・ワーク、限りなくメロディアスな北川のベース・プレイにも耳を奪われます。メロウな空気を漂わせたまま、次は、やはり80年代からのレパートリーである「Bud-Like」に突入。敬愛するバド・パウエルに捧げたアップ・テンポのナンバーで、左手で奏でられる強力なオスティナートと流れるような右手アドリブ・フレーズの対比が絶妙です。この曲や「New York Attitude」におけるバロンのプレイは、私にとって"いま、目の前で体験できるモダン・ジャズの醍醐味"そのものでした。このファースト・セットではカエターノ・ヴェローゾ作の「Aquele Frevo Axé」、ブレイクの超高速プレイが冴えるスタンダード・ナンバー「The Surrey With the Fringe on Top」等も奏でられ、鳴りやまない拍手に応えて最後に飛び出したのは無伴奏ソロ「Song For Abdullah」。南アフリカ出身のピアニスト、アブドゥーラ・イブラヒムに捧げた自作で、1985年の名盤『Scratch』で知れ渡ったナンバーですが、演奏中の場内は、名匠の技を一音でも聴き逃すまいとばかりの静けさです。ピアノから音が消え去ったあと、割れんばかりの拍手が巻き起こったことは言うまでもありません。

アコースティック・ジャズの魅力を伝導する達人たちのブルーノート東京公演は24日まで続き、さらに25日には高崎芸術劇場でも公演が行われます。最新作『ビヨンド・ディス・プレイス』も大変な好評であるだけに、前回以上に必聴必見のステージとなることでしょう。
(原田 2025 4.21)

Photo by Yuka Yamaji


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【LIVE INFORMATION】

KENNY BARRON TRIO
2025 4.20 sun. コットンクラブ
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2025 4.21 mon., 4.22 tue., 4.23 wed., 4.24 thu. ブルーノート東京
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2025 4.25 fri. 高崎芸術劇場 / スタジオシアター
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