2009.03.24
GIOVANNI MIRABASSI TRIO
artist GIOVANNI MIRABASSI
- report : GIOVANNI MIRABASSI, (May 2009)
フランスを拠点に活動するイタリア人ピアニスト、ジョヴァンニ・ミラバッシ。ヨーロッパ・ジャズ・ピアノ・ファンを代表する逸材のひとりですが、「ブルーノート東京」への出演は初めてです。クラブで彼の妙技が満喫できる機会がようやく来ました。
共演者は、ジャンルカ・レンジ(エレクトリック・アップライト・ベース)とレオン・パーカー(ドラムス)。つまり、“黄金のミラバッシ・トリオ”によるステージです。レンジはミラバッシより5歳若い1975年生まれ。パオリーニョ・ダ・ラ・ポルタ、マーク・ジョンソン、パレ・ダニエルソンに奏法を習ったという技巧派です。パーカーはミラバッシより5歳年上で、ジャッキー・テラソン・トリオやチャーリー・ハンターとのデュオで大活躍したり、デューイ・レッドマンの隠れ名盤『Choices』に貢献するなど、'90年代のニューヨークで最も新鮮なビートを刻んだひとりです。近年はヨーロッパを中心に演奏し、最小限のドラム・セット(セロニアス・モンクのバンドで活動したベン・ライリーから影響を受けたそうです)をフルに使ったカラフルなプレイには、いっそうの磨きがかかっています。
オープニングはミラバッシのソロ・ピアノによる「EL PUEBLO UNIDO EL JAMAS SERA VENCIDO」。ここでオーディエンスの注目をぐっと引き寄せた後、いよいよトリオ演奏の開始です。“何を聴かせてくれるのだろうか”とかたずを呑んでいたら、スタンダード・ナンバーの「イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー」が飛び出したではありませんか。テーマ・メロディを弾き終えたミラバッシは、もう待ちきれないといった感じでアドリブ・パートに突入します。そこにジャンルカ・レンジのベースが絡み、レオン・パーカーが左足を高く上げながらビートを刻みます。ここからアンコールまで、彼らは文字通りの熱演で楽しませてくれました。
それにしてもレオンのプレイには目と耳を奪われました。先述したようにドラム・セット自体はシンプルそのものなのですが、そのぶん、叩き方へのこだわりが尋常ではありません。マレット(先っぽに丸い玉がついた棒)、スティック、ワイアー・ブラッシュ(ハケのような棒)をこまめに持ち換えるだけではなく、スティックを立ててシンバルをひっかいたり、手のひらや指で鼓面を叩いたり、ドラムの縁を叩いてカラカラした音を出したり、響線(スネア・ドラムの下についている帯)をつけたり外したりしながら、ニュアンス豊かなサウンドでリーダーのピアノを盛り立てていくのです。
メンバー紹介のとき、ミラバッシは彼のことを“ザ・グレイト・レオン・パーカー”と呼んでいました。たしかにグレイトです。これからレオンの演奏を目の当たりにする皆様も必ずぼくと同じように目が点になり、“すごいなあ・・・”とつぶやくことでしょう。
3/29 sun は、ミラバッシのソロ・ピアノ・コンサートもすみだトリフォニーホールにて行われる予定です。こちらも見逃せませんね。
(原田 2009/3/23)
coming soon