2009.04.13
"CAFE CAMILO"
artist MICHEL CAMILO
- 原田和典の公演リポート:MICHEL CAMILO Piano Clinic "CAFE CAMILO"
天気は快晴。春を飛び越して今にも夏になりそうな4月11日の午後、ミシェル・カミロのクリニック「Cafe Camilo」がブルーノート東京で行なわれました。
カミロ、うれしそうです。
「Cafe Camilo、いいタイトルだね。ぼくもコーヒーが大好きでよく飲むんだよ」といいながら、おもむろにピアノの椅子に座ります。そして、「ピアノを演奏しているひとはどのくらいいるかな?」と、客席を見回します。次に「ギターは? ベースは? ドラムスは? 管楽器は?」と、順に問いかけていきます。
ゆっくりうなずいたカミロは、おもむろに語り始めました。以下、ぼくの印象に残ったところです。もっとも、カミロ本人の発言とは若干、ニュアンスが異なるかもしれませんが・・・・。
● 楽器として「完璧」なピアノは存在しない。ピアノに自分を合わせていく。そのためには、まずソフトに弾き、楽器のキャラクターを把握する。
● 指先や肩に力をこめてピアノを弾くのではなく、「腎臓」に力をこめて弾いてみよう。
● ピアノ演奏には「呼吸」が何よりも大事である。「呼吸」をコントロールすれば、精神がリラックスする。速いフレーズも難なく弾けるようになる。
●指に鍵盤を覚えさせる。そうすると、指先が「目」になるので、目を閉じても弾けるようになる。したがって、シンフォニー・オーケストラと共演しても、楽譜をみることなく、ずっと指揮者を見ていられる。
●ペダルを必ずしも完全に踏み込む必要はない。4分の1、3分の1踏むことによって、音に微妙な変化が生まれる。鍵盤を押した後にペダルを踏むのも良い。
● 自分の演奏を録音し、あとでチェックするのも良いアイデアだ。メトロノームやドラム・マシーンを敵視するのではなく、「友達」にしよう。
クリニック後半では、実に興味深い説を聞かせてくれました。♪♪♪という1小節単位のリズム・パターンが、アフリカからさまざまな地域に伝来し、「ハバネラ」(スペイン)、「ラグタイム」(アメリカ)、「ショーロ」(ブラジル)に発展、キューバでは2小節に拡大され「クラーベ」になった、というのです。それをカミロ本人がピアノを弾きながら説明してくれるのですが、いやはや、これには引き込まれました。ジャズ・ピアノの歴史的巨人であるアート・テイタムやエロール・ガーナーのスタイルの実演も聴かせてくれたのも、個人的にはすごく嬉しかったです(ぼくは彼らの大ファンでもあるのです)。
ぼくは以前、アルト・サックス奏者、スティーヴ・コールマンのセミナーを受講した(というか、紛れ込んでしまった)ことがあります。そのときにも感じたのですが、ミュージシャンの話って本当に面白くて奥が深いですね。
これからもいろんなひとが「cafe」に登場してくれることを、心から楽しみにしています!
(原田 2009/4/11)
coming soon