2009.06.14
TERRI LYNE CARRINGTON
artist TERRI LYNE CARRINGTON
<<< 原田です。
今回は、TOWER OF POWER のファンクラブ・会長としても有名な、
今回は、櫻井隆章先生へ、ご執筆をお願いしました。
西海岸系スムース・ジャズも非常に詳しい方です。
櫻井隆章の公演初日リポート:TERRI LYNE CARRINGTON GROUP
まぁ、見事なショウだった。そして、色々なことを考えさせてくれるライヴでもあった。まず、当り前のことなのだが、アメリカの音楽界の奥深さと多様さ、そして圧倒的な実力の高さ。そもそも、ステージの上の光景自体が多様さを表している。人種も年代も性別さえもバラバラなミュージシャンが並んでいるのだ。そして誰もがジャンルを越えた音楽を軽々とプレイする。そのどれもが見事な水準のプレイなのだから、ライヴ通いは止められない!
場内暗転と共に、静かに沸き起こる期待の拍手。そこにアーティスト達が登場し、曲が始まる……と思ったら、まずはテリ・リンがメンバーを丁寧に紹介。サックスのエヴァレット・ハープやキーボードのグレッグ・フィリンゲインズなどは、彼等だけで充分にお客さんを集められる人達だ。目の前の光景の贅沢さを痛感する。そして始まった1曲目、何とビートルズ・ナンバーの「ミッシェル」。如何にもアグレッシヴで前衛的ですらあるアレンジが興味深い。
しっかりと「ジャズ」しているのである。続く2曲目は、ジョニ・ミッチェルの「エチオピア」だ。ここではテリ・リンがドラムを叩きながらヴォーカルも。彼女の歌、実に良い味である。また、こうした選曲も面白い。それが終ったところでヴォーカリストのロリ・ペリーがステージへ。強烈なパーソナリティの持ち主で、彼女が登場するとメンバーの誰もが笑顔になり、白い歯を見せる。雰囲気を一人で変えられる個性は、それだけで強い武器だ。圧倒的な声量とお客さんを一瞬にして酔わせる実力。そして曲調もソウル〜R&Bとなり、プレイヤー達の表情も緩む。ニュー・アルバム『モア・トゥ・セイ』からのナンバーを中心に、でもアルバムで聴けるそれとは大きく印象も変っている。これもライヴの醍醐味の一つだろう。ジャズをベースに、ソウル・タッチと飛び入り参戦の DJ KOU によるヒップ・ホップのフレイヴァーまで含み、さながら「オール・アメリカン・ミュージック・バンド」の様相すら見せつつ、あっと言う間に大団円だ。時計を見ると充分な時間が過ぎているのだが、それを感じさせないスキの無さ。この辺りが、ステージ運びの上手さなのだ。そして、ほぼ一曲毎に曲紹介のMCを挟むテリ・リンの丁寧さにも頭が下がる。
そして、何よりも印象的だったのが、終演後のお客さん達の笑顔だった。聴く者、見る人に大きな刺激を与え、そして笑顔を与えてくれる、アーティスト達。こんな見事なショウを見せてくれるのだから、「生の音楽って、本当に良いな」とつくづく思うのだった。
(櫻井隆章)
coming soon