2009.07.05
CHINA MOSES
artist CHINA MOSES
原田和典の初日公演レポート:CHINA MOSES
話題沸騰中のディーヴァ、チャイナ・モーゼスが最新アルバム『フォー・ダイナ』を引っさげて、待望の初登場を果たしました。
ジャズ界ではまったくの新人といっていい彼女ですが、実は10年選手です。R&B〜ソウル・ミュージック界で華々しくデビューし、プロデューサー、MTVの司会者としても人気を集めるスターなのです。母親はご存知、ディー・ディー・ブリッジウォーター。ハンス・ダルファーとキャンディ・ダルファーなど、ひとつのバンドで一緒に出演した親子アーティストはいますが、親子それぞれが別個にリーダーとしてブルーノート東京に登場するケースは本当に稀といえましょう。
そんなチャイナがトリビュートした“ダイナ”とは誰のことでしょう? そうです、伝説のシンガー、ダイナ・ワシントンのことです。日本に一度も来ることなく1963年に亡くなってしまったので、われわれにとっては正直言って身近な存在とはいえません。が、アメリカの後進たちに与えた影響力はとても大きく、あのアレサ・フランクリンもナンシー・ウィルソンもデビュー当時は“ダイナ・ワシントンの再来”といわれたほどでした。また、ダイナは常に才能のあるジャズ・ミュージシャンを伴奏バンドに加えていたことでも知られていて、ウィントン・ケリー、ジュニア・マンス、ジョー・ザヴィヌル、ジミー・コブ等は彼女の許から巣立っています。あだ名は“ザ・クイーン”(女王)。在命中は“ザ・レディ”(淑女)ことビリー・ホリデイと評価を二分しました。
ステージにあらわれたチャイナは、次々とダイナゆかりのナンバーを歌います。“遠慮しないで、どんどん手拍子したり、スクリームしたり、足踏みしてくださいね”という彼女の言葉に導かれるように、客席からはごく自然に手拍子や掛け声が沸き起こります。個人的には「IS YOU OR IS YOU AIN'T MY BABY」を歌ってくれたのが嬉しかったですね。ぼくはすごく子供のころ、この曲を「トムとジェリー」で覚えました。トムがベースを弾きながら、メス猫の前で歌うシーンは忘れられません
どちらかというとダイナよりはルイ・ジョーダン(サックス兼ヴォーカル奏者、ロックンロールの誕生にも大きな影響を与えました)で有名な歌なのですが、チャイナは女性ですからルイが歌った“I love her”“ask her”という箇所を“I love him”“ask him”と直して、より艶っぽく迫ります。
後半は「DINAH'S BLUES」、「FINE FINE DADDY」など、ブルース大会の様相を呈しました。ラストの「EVIL GAL BLUES」では、クオシモードのメンバーも飛び入りして、セッションはさらに白熱。歌といい、MCといい、アクションといい、チャイナは本当に母親ディー・ディーゆずりのエンターテイナーです。
今後のチャイナのさらなる活動を心から楽しみにすると共に、ひとりでも多くのひとにダイナ・ワシントンのCDも聴いてもらえたら・・・そう思いながらぼくは、クラブを後にしたのでした。
(原田 2009/7/4)
7/4 sat. - 5 sun.
CHINA MOSES
coming soon