公演レビュー:RAMSEY LEWIS
おかえりなさい、といいたい気分です。
ジャズ・ファンク・ピアノのゴッドファーザー、ラムゼイ・ルイスが12年ぶりに「ブルーノート東京」に戻ってきたのは昨年6月のこと。歯切れよく、ピンと立ったピアノの音を昨日のように覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。ぼくも“ラムゼイ節”を思いっきり楽しみました。そして「次はいつ来るんだろう、もう12年も待たせないでほしい」と願いました。
その願いが叶い(と、信じるのがファン心理です)、この8月下旬、巨匠はふたたびクラブに登場します。フォーマットは無論、彼のピアノにベース、ドラムスを加えたトリオです。
思えばラムゼイは1956年に通称“ジェントルメン・オブ・ジャズ”と呼ばれるユニットでアルバム・デビューして以来、ほとんど一貫してトリオでの活動を続けてきました。シンセサイザー奏者やギタリストを加えていた時期もありますが、それもあくまでトリオに対するサポート・ミュージシャン的な役割でした。
なぜラムゼイ・ルイスはトリオ編成にこだわるのでしょうか?
ファン歴30年の(’79年に、NHK-FMで「ジ・イン・クラウド」を初めて聴いた)ぼくに推測させてください。おそらくラムゼイは、「ベース、ドラムスとのユニットこそ、自分のアコースティック・ピアノが輝く最高のフォーマットである」と考えているのでしょう。昔からよく「ピアノは小さなオーケストラ」といわれますが、そこに低音を送り出すベースと、リズムを生み出すドラムスが入れば天下無敵。毛利元就の「三本の矢」ではありませんが、3つの楽器が呼応することによって、響きはより強いものとなり、小さなオーケストラが大きなオーケストラに変化、アレンジ(編曲)によっては、さらにさらに重厚壮大な響きをつくり出すことができます。ラムゼイのトリオ・アルバムを聴けば、彼がいかにアレンジを大切にしているか、曲をいかにオーディエンスの耳に届かせるべく工夫しているかがハッキリと分かるはずです。
● ♪ THE IN CROWS
:今回の公演では、Larry によるウッドベースですが、この映像のようなエレキもしびれます。
歴代のラムゼイ・ルイス・トリオには、ベースのエルディ・ヤングやクリーヴランド・イートン、ドラムスのレッド・ホルトやモーリス・ホワイト等が在籍していました。ヤングとホルトは独立後“ヤング=ホルト・アンリミテッド”を結成し、「ソウルフル・ストラット」という大ヒットを放ちます(スイング・アウト・シスターが歌った「セイム・ガール」の原曲です)。イートンはのちにカウント・ベイシー・オーケストラに参加しましたし、ホワイトはご存知“アース、ウィンド&ファイアー”を結成しました。いいえ、大成したのは彼らだけではありません。ラムゼイは常に優秀なバンド・メンバーと共に、質の高い音楽を作り続けているのです。
● ♪ Hang on Sloopy
● ♪ WADE IN WATER