2009.11.09
review : ザヴィヌルへ捧げる
artist MATTHEW GARRISON
公演レビュー:MATTHEW GARRISON TRIO featuring SCOTT KINSEY & HORACIO "EL NEGRO" HERNANDEZ
Tribute to JOE ZAWINUL
マシュー・ギャリソンがブルーノート東京にリーダーとして登場するのは、これが初めてです。開演が待ち遠しい、とわくわくしているベース・フリークも多いのではないでしょうか。
来年はホイットニー・ヒューストンのバンドメンバーとして来日もするようです。
ポップのフィールドでの活躍もあり、そして本来の姿を見せつける今回の公演もあり、またカレッジの講師もしているそうで多忙をきわめているようです。
父親は、’60年代に一世を風靡したジョン・コルトレーン・バンドのベース奏者であるジミー・ギャリソン。’66年にはコルトレーン唯一の来日公演にも同行しました(そこには、今春ブルーノート東京に出演したファラオ・サンダースもいました)。残念ながらジミー・ギャリソンはマシューが6歳のときに亡くなってしまいますが、“ベーシストの血”は確かに受け継がれたようです。
一時期は家族と一緒にイタリアのローマに移住していたマシューですが、88年に帰米し、父親と親しかったジャック・ディジョネットの家に住みます。そこでジャックやデイヴ・ホランドのトレーニングをみっちりと受け、89年にボストンのバークリー音楽大学に入学します。94年には故郷ニューヨークに戻り、ジョー・ザヴィヌル、ジョン・マクラフリン、ミシェル・ンデゲオチェロ、ハービー・ハンコック、ジョニ・ミッチェルらと共演(今はホイットニー・ヒューストンのバンドにも所属しています)。ソロ・アルバムも3枚あります。日本のファンに最も早く“マシュー、恐るべし”というインパクトを与えたのはザヴィヌルの『マイ・ピープル』、マクラフリンの『ザ・ハート・オブ・シングス』あたりでしょうか。ぼくは、スティーヴ・コールマン&ファイブ・エレメンツの一員として吹き込んだ『デフ・トランス・ビート』もマシューの名演が聴ける逸品だと思っています。
多くのエレクトリック・ベーシストは右手人差し指と中指を使って演奏します。しかしマシューはすべての指を使ってプレイします。あっと驚くような超絶フレーズが楽々と飛び出すのはこのためかもしれませんが、ぼくがマシューのプレイで何より好きなのは、“間の使い方のうまさ”、“ソリストを背後からじわじわと盛り上げていくベース・ライン”です。今回の公演はスコット・キンゼイ、オラシオ・エル・ネグロ・エルナンデスという申しぶんないメンバーとの共演だけに、マシューのあらゆる魅力が味わえることでしょう。
本当に今回の公演は、できるだけミュージシャンに近い場所で聴いてほしい。表情や指使いだけではなく、爪の動きが見えるぐらいの距離で、3人のバトルロイヤルを体験していただきたいと思うのです。
そして、マシューからのメッセージにもある通り、ザヴィヌルへの想い、これが今回のトリオのテーマです。
(原田 11/10/2009)
● ハービー・ハンコック "Future 2 Future" 参加時の映像
● ♪ Giant Step
coming soon