2009.11.22
ビリーホリデイへ捧げる
artist DEE DEE BRIDGEWATER
公演レビュー : DEE DEE BRIDGEWATER
ディー・ディー・ブリッジウォーターの公演が近づいてきました。昨年はブルーノート東京の20thアニバーサリーを祝う多彩なプログラムで楽しませてくれましたが、今年は没後50周年を迎える“ジャズ・ヴォーカルの女王”ビリー・ホリデイに因んだステージです。
そこで今回はビリー・ホリデイについて書いてゆきます。
彼女は1915年にペンシルヴァニア州フィラデルフィアに生まれ、メリーランド州ボルチモアで育ちました。ルイ・アームストロングのレコードに感動したことをきっかけに、ジャズに関心をもつようになったといわれています。18歳のときにベニー・グッドマン・バンドの一員として初レコーディングを果たし、’30年代半ばから後半にかけてはテディ・ウィルソン(スイング・ピアノの最高峰といわれています)やテナー・サックス奏者レスター・ヤングと数々の素晴らしいレコーディングを残しています。また、短期間ですがカウント・ベイシー・オーケストラで歌っていたこともあります。
ぼくがビリーの歌を最初に聴いたのは今から20年以上も前のことです。が、第一印象は決してよいものではありませんでした。でも面白いものです。寝ぼけているような歌だなあとか、どこにメリハリがあるんだか、ちっとも美声じゃないなとか思いながらなんとなく聴いていくうちに、だんだんハマっていき、気がつくとレコードを次から次へと集めたくなる・・・だんだんと、そんな気分になっていくのですから。
ビリーの歌は、タイミングが突拍子もありません。切れるところでつながり、つながるところでふと切れる。それが予想もつかないスリルをもたらします。メロディは伴奏の上を漂うように歌われ、ボーっとして聴いていると管楽器のようにも響いてきます。決して声を張り上げることなく、楽器の真似事をわけでもなく、ただただ自分の心に忠実に、歌詞を大切に表現される歌の数々。彼女なら処方箋を読んでもジャズになるはずです。
ビリーはまた、「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」、「ドント・エクスプレイン」等、いくつもの印象的なオリジナル曲を書いています。つまりシンガー・ソングライターの元祖でもあるわけです。そのドラマティックな生涯はダイアナ・ロスの主演で映画化されたこともありますし(’72年公開『ビリー・ホリデイ物語』)、U2の「エンジェル・オブ・ハーレム」はビリーに捧げられた1曲として知られています。ジャニス・ジョプリンもエリカ・バドゥも“ビリー・ホリデイ・チルドレン”だと、ぼくは考えています。
ディー・ディーは「ビリー・ホリデイ賞」を獲得し、ビリーのあだ名に因んだ『レディ・デイ』というミュージカルにも出演しています。彼女にとってビリーの存在は体の一部なのでしょう。スキャットをせず、マイクの前で淡々とけだるそうに歌うビリーと、スキャットを得意として、全身を大きく動かしながら歌うディー・ディーのスタイルは、一種対照的ですが、それだけにディー・ディーがビリーゆかりの名曲をどう解釈するのか、興味がつのります。ジャズ・ヴォーカル・ファンならずとも、絶対に見逃せない公演になることでしょう。
(原田 2009/11/22)
● Billie Holiday - ♪ Strange Fruit
● ♪ "Oh, Lady Be good" - Dee Dee Bridgewater & The Italian Big Band
coming soon