2010.03.19
THE MANHATTAN TRANSFER featuring "The Chick Corea Songbook"
artist THE MANHATTAN TRANSFER
report : THE MANHATTAN TRANSFER "Chick Corea Song Book"
この2010年は、マンハッタン・トランスファーと日本のファン双方にとって特別な1年です。
そうです、今年は初来日からちょうど30周年のアニバーサリーにあたるのです。
1970年代後半から、メンバー・チェンジは一度もなし。ティム・ハウザー、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル、シェリル・ベンティーンという“黄金の4人”は、ぼくが見た初日のファースト・セットでも、鉄壁のアンサンブルとゴキゲンなハーモニーを聴かせてくれました。
本当に彼らは、あらゆるところで“ハモって”います。歌声自体はもちろんのこと、手拍子、フィンガー・スナッピン(いわゆる指パッチン)、さりげない仕草のひとつひとつまでが、ぴったりと合っています。そしてスイング・ナンバーも、R&Bも、ブラジリアン・ポップスも、フュージョンも、ドゥーワップも、見事に歌いこなします。“そりゃ当たり前だよ、天下のマントラだもの”という声もきこえてきそうですが、考えれば考えるほど、彼らの柔軟性・多様性と、ハイレベルなのにエンターテイメント性抜群のパフォーマンスには驚かされるばかりです。
もちろん「ROUTE 66」、「BIRDLAND」、「JAVA JIVE」など十八番もたっぷり聴かせてくれましたし、メンバーのソロ・コーナー(ぼくがみたときはシェリルとティム)もありました。ティムが歌う「SHE’S FUNNY THAT WAY」も良かったですねえ。ちょっとジャック・ニコルソンみたいな彼が身振り手振りを交えて、“どうして彼女は俺みたいな男に夢中なんだろう、おかしいなー。彼女はもっといい男のところに行ったほうがいいんだ。俺と一緒にいたらダメになってしまうんだよ”と歌うと、なんともいえない暖かみと哀愁が伝わってきて、ぼくは“ああ、アメリカン・エンタテインメントって沁みるなあ!”と改めて思ったのでした。
お待ちかねの最新作『チック・コリア・ソングブック』からは「SPAIN」、「ONE STEP CLOSER」(チックは「THE ONE STEP」というタイトルで演奏)、「500 MILES HIGH」等を披露。これはもう、実際にライヴを聴いて体感してください、というしかないですね。4人とも、格別に気迫のこもったヴォーカルを聴かせてくれました。
彼らが成功を収めて以来、音楽界は数多くのフォロワーを生み出しました。混声ヴォーカル・グループがデビューするたびに、いったい何度“マントラの再来”という言葉が使われたことでしょう。しかし今なお精力的な活動を続け、世界を楽しませているのは“本家”マンハッタン・トランスファーをおいてほかにはありません。
(原田 2010/3/17)
● 3.17wed.-3.21sun.
THE MANHATTAN TRANSFER
featuring "The Chick Corea Songbook"
coming soon