2010.06.07
RICHARD GALLIANO FRENCH TOUCH TRIO
artist RICHARD GALLIANO
公演初日リポート:RICHARD GALLIANO FRENCH TOUCH TRIO
“1秒たりとも聴き逃せない”とは、こういうステージに対して使う表現なのだと思います。
溢れんばかりの美しすぎるメロディ、メロディ、メロディ。そして奥行きのあるハーモニーとリズム。そこにユーモアと洒落た風格(これが本物のエスプリというものなのでしょう)が加わった世界は、まさしくワン&オンリー。万雷の拍手に包まれながら高揚した面持ちでステージを降りるリシャール・ガリアーノに、ぼくは“ブラボー、マエストロ!”と声をかけたくなりました。
ガリアーノが演奏するのはボタン式アコーディオンです。大抵のアコーディオン奏者は椅子に座ってプレイします。しかしガリアーノは、楽器をより心臓(ハート)に近づけるかのように、楽器を抱えながら立って演奏します。アコーディオンはもともと大変に形状の美しい楽器です。それがガリアーノの手にかかると、魔法の道具にも変化します。すべての指が自由自在に楽器の上を動き、すべての音が彼の“声”となって客席に伝わります。ボタン式鍵盤は遠目から見ると真珠のようにキラキラと光っています。
もちろん“フレンチ・タッチ・トリオ”の構成員であるギターのジャン・マリー・エカイ、ベースのジャン・フィリップ・ヴィレも密度の濃いプレイを聴かせてくれました。ヴィレはコントラバス・アンサンブル“オルケストラ・ド・コントラバス”での超絶的なアルコ(弓弾き)でも知られていますが、この日はピチカート(指弾き)を中心に痛快にスイングしていました。エカイはフュージョンもロックも何でもこなす奏者ですが、この日はアコースティック・ギターに専念し、ロマンティックなプレイでガリアーノのアコーディオンを引き立てておりました。
ステージはトリオ演奏のほか、ギターやベースとのデュオ、無伴奏アコーディオン・ソロ、口笛とのユニゾン、そして“歌口のついたそろばん”と形容したくなる珍しい楽器=アコーディーナによるパフォーマンスなど、多彩な内容で構成されていました。ガリアーノは、あのアストル・ピアソラにも賞賛された巨匠です。もっと偉そうに振舞っても、誰も文句のいえないレベルに達した存在です。しかし彼は本当に謙虚そのもの、オーディエンスひとりひとりの心に届くように誠心誠意、演奏します。
実をいうとぼくがガリアーノのライヴに接したのはこれが初めてです。何度か来日している人気アーティストなのに、なぜか生を見る縁がなかったのです。だけど今回、ステージを体感できて本当によかった。ますますガリアーノの音楽が好きになりました。こういうことがあるから、ライヴ・ウォッチングは本当にやめられません。公演は10日まで続きます。皆さんもぜひ、ガリアーノの魔術に酔いしれてください!
(原田 2010/6/7)
● 6.7mon.-6.10thu.
RICHARD GALLIANO FRENCH TOUCH TRIO
coming soon