2010.07.29
JOYCE with special guest CELSO FONSECA
artist JOYCE
公演初日リポート:JOYCE with special guest CELSO FONSECA
ジョイスが“日本のホームグラウンド”、ブルーノート東京に帰ってきました。
いつも素敵な仲間を連れてきてくれるジョイスですが(彼女の交友範囲の広さは、数々のコラボレーション・アルバムでおなじみのことでしょう)、今回はセルソ・フォンセカを迎えたステージです。しかも、ステージをともにするのはなんと初めてらしいです。
前半はジョイスのバンドによるパフォーマンスが続きます。夫君トゥチ・モレーノのドラムスは相変わらず繊細でシャープ、まるでジョイスのヴォーカルに相槌を打つようなプレイです。ジョイスとトゥチは演奏の場を離れても大の仲良しなのですが、ドラムスと歌声の絶妙なコンビネーションに接すると、「このふたり、知り合ってからずっと愛し合っていて、口げんかすら一度もしていないんだろうな」と思えてきます。これこそまさしく“おしどりカップル”というべきでしょう。
ピアニストが参加したのも今回の公演の特徴です。ガンガン、ジャズ・フレーズ満載のプレイでアドリブをとっているので、相当ジャズの素養のあるミュ−ジシャンなのだろうと思って奏者の顔を見たらなんと、エリオ・アルヴェスではないですか。ニューヨークを拠点に活動する、ブラジリアン・ミュージックとモダン・ジャズを自在に行き来する才人です。ぼくはReservoirというレーベルから出ているリーダー・アルバムを聴いて、すっかり彼のファンになったのですが、生演奏に接する機会は今の今までありませんでした。ジョイスのギターとエリオのピアノが一体となって生み出されるハーモニーは、とても豊かで美しいものでした。エリオは10月、渡辺貞夫のバンドで再登場する予定です。ぜひチェックしていただければと思います。
セルソが登場したのは、プログラムの中盤になってから。ギターを抱えた長身が相変わらず絵になります。黒のジャケット、白いシャツ。そのさりげない着こなしはファッション・モデルのようです。シンガー・ソングライター、サウンド・クリエイターとしての評価も高い彼ですが、今回はアントニオ・カルロス・ジョビンの「SHE'S A CARIOCA」(英語で)、ギターのチューニングを変えて(6弦の張りをゆるくして)バーデン・パウエルの「CONSOLACAO」などを味わわせてくれました。
ラストはマルコス・ヴァーリの定番「SAMBA DE VERAO」(サマー・サンバ)。マルコス本人も5月に来日してこの曲を聴かせてくれたばかりですが、ジョイスとセルソの共演で聴く“夏のサンバ”には、また違った魅力があります。セルソの声にジョイスの声がそっと重なり、やがてハーモニーを描いてゆきます。「前もってハモろう」と決めていたというよりは、「一緒にステージに立っているうちになんとなくハモってしまった」感じなのがいいですね。日本人が、いきなりふたりで歌おうとしたら、どうしてもユニゾンになってしまうような気がします。だけど彼らはごく自然に「ハモれて」しまうのです。ブラジル音楽がどうしてあんなに豊かな和音を持っているのか、その謎を知ったような気分になりました。
(原田 2010/7/28)
● 7.28wed.-8.1sun.
JOYCE with special guest CELSO FONSECA
coming soon