2010.10.18
KYLE EASTWOOD
artist KYLE EASTWOOD
公演初日リポート:KYLE EASTWOOD
ベーシストとして、バンド・リーダーとして、映画音楽の作曲家として進境著しいカイル・イーストウッドが、今年も気合の入ったパフォーマンスでブルーノート東京を沸かせています。
今回は2本の5弦エレクトリック・ベース(フレットあり、フレットなし)、そしてエレクトリック・アップライト・ベース(コントラバスの下、3分の1がないユニークな形状で“Road Bass”と呼ばれています)を曲ごとに持ち換えてのステージ。「METROPOLITAIN」、「COSMO」等、これまでのアルバムの人気ナンバーに加え、録音したばかりという新作(来春発売だそうです)からの曲も、惜しげもなく聴かせてくれました。
カイルの書くメロディは、とてもキャッチーです。そしてリズムが多彩です。ジャズ、フュージョン、サンバ、アメリカン・ポップスなどの影響がほどよく混じり合った音作りは、実に快適、そして爽やかです。そしてどの曲も、ベース・ラインが生き生きとしています。決して長いソロはとらないカイルですが、どうすればベースの良さが引き立つか、ベースの魅力を伝えられるかに細心の注意を払って演奏を進めているのでしょう。
中盤ではピアノの、アンドリュー・マコーマックとのデュオで映画「硫黄島からの手紙」のテーマ・ソングをしっとりとプレイ。それまでノリノリだったクラブが一転、静けさにつつまれます。限りない余韻を残してカイルがエレクトリック・ベースを弾き終わると、超満員の会場からため息が漏れました。
父親がクリント・イーストウッドである事実が彼にとってどれほど大きな位置を占めているのか、有名人の息子ではないぼくには正直言って想像しかねます。しかしカイルの音楽はどこまでも伸びやかで、自信に溢れています。自分の決めた道を、気心の知れた仲間と共に歩んでいく・・・その喜びが、彼のグループの演奏から、ひしひしと伝わってきました。
来月は「ブルーノート・ニューヨーク」に出演、その後はサウス・カロライナやワシントンDCでも演奏する予定です。カイルはこれからも軽快なフットワークで、独自の世界を切り開いていくことでしょう。
(原田 2010 10.17)
coming soon