2011.02.21
ROY HARGROVE QUINTET
artist ROY HARGROVE
公演初日リポート:ROY HARGROVE QUINTET
トランペット・プレイだけではなく、おしゃれなファッション・センスでも人気を集めるロイ・ハーグローヴが、今年も元気な姿を見せてくれました。正統派ジャズからヒップ・ホップ系プロジェクトまで神出鬼没の彼ですが、今回はここ数年、ずっと続いているレギュラー・クインテット(5人編成)による演奏です。
共にフロント・ラインをつとめるジャスティン・ロビンソン(アルト・サックス)はロイとほぼ同時期、1990年代初頭にデビューしたミュージシャン。いっぽうリズム・セクションは若手揃いで、ピアノのサリヴァン・フォートナーは、この12月に24歳になったばかりです。ニューオリンズに生まれ、ニューヨーク移住後はジェイソン・モランに師事。最近は逸材テナー・サックス奏者、トニー・マラビーとも共演していますね。ベースのアミーン・サリームは1979年ワシントンDC出身で、同地のデューク・エリントン音楽院を卒業し、今はニューヨークを拠点に活動しています。かつてジョン・コルトレーンと共演していたジミー・ギャリソン(マシュー・ギャリソンの父)を思わせる、太い生音と強いタッチが印象的です。ドラムスのモンテス・コールマンは2007年からロイと共演し、ラッセル・マローン(ロン・カーター率いるゴールデン・ストライカー・トリオのギタリスト)の新作CDにも参加しています。
かつてロイはジョー・ヘンダーソン、ジャッキー・マクリーン、レイ・ブラウン、デヴィッド・ニューマンなど、今となっては二度と生で聴くことのできない熟練ミュージシャンと共演し、彼らに鍛えられて成長しました。そしていま、ロイは「今度は自分がその立場になる番だ」とばかりに、期待の新星をバンドに加え、バックアップしているのでしょう。
演奏曲はロイと同郷の大先輩、ピアニストのシダー・ウォルトンが書いた「HINDSIGHT」から始まりました。ほかにもデューク・ピアソン作「IS THAT SO?」、ジョン・ヒックス作「AFTER THE MORNING」、ウォルター・ブッカー作「BOOK'S BOSSA」など、いわゆるハード・バップを愛する者にはたまらない選曲が続きます。このへんのナンバーを、かつてさんざんジャズ喫茶で聴いたベテラン・ジャズ・ファンは少なくないのではないかと思います。その曲が今、ロイ・ハーグローヴ・クインテットによって新たな息吹を注がれて、蘇るのです。
ステージ後半になると、ロイは歌手としての魅力も発揮します。味のある歌声で、バラード「NEVER LET ME GO」をしっとりと聴かせてくれました。そして本編ラストでは、もはや定番の「STRASBOURG /St. DENIS」を演奏し、客席をさらに熱狂させます。この曲やアンコールの「SOULFUL」等はまさにクインテットの真骨頂。ヒップ・ホップを通過した者ならではの新鮮なアコースティック・ジャズの世界を楽しませてくれました。
また、アンコール曲のエンディングでは、ちょっとした演出があります。これを体験すれば誰もが、「ああ、ライヴに来てよかったな」と、さらに強く思うことでしょう。
(原田 2011 2.20)
● 2.20sun.-2.23wed.
ROY HARGROVE QUINTET
●2.25fri. はコットンクラブにて公演
●2.26sat. はモーション・ブルー・ヨコハマにて公演
●3.1tue. は 大阪:心斎橋クラブクアトロにて公演
coming soon