2011.07.25
日野皓正 "AFTER SHOCK"
artist 日野皓正
公演初日リポート:日野 皓正
-AFTERSHOCK-
この公演、本当に本当に楽しみにしておりました。日野皓正のAFTERSHOCK公演です。
もちろんぼくは、ライヴに備え、最新作『AFTERSHOCK』を何度か聴いて“予習”しました。しかし、実際のライヴに接すると、“予習”が吹っ飛んでしまいます。CDに収められた楽曲が燃え上がり、昇華して、どんどんどんどん発展していくのです。音楽はナマモノ、生き物であるとは、よくいったものです。おそらく日野皓正以外、ステージ上のミュージシャンすら、演奏がどうなっていくのか、どこでエンディングにたどりつくのか、わかっていないところもあったのではないでしょうか。しかし、これが面白いのです。予定調和や安定といった言葉に真っ向から刃向かうような、アグレッシヴでエキサイティングな演奏に、ぼくは興奮しっぱなしでした。
日野皓正といえば、御存知、超大物です。紫綬褒章など、いろんな賞にも輝いています。昔のヒット曲を昔のようにやっても、お客さんを喜ばせることはできるでしょう。しかし彼は、それをしません。親子ほど歳の離れたミュージシャンたちと組んで、断崖絶壁のようなところに身をおきながら、まさしくその場その場で新しいフレーズを放ってゆきます。ぼくは、その「いちかばちか」、「見る前に跳べ」的なプレイに強くジャズの醍醐味を感じます。
いわゆるテーマ→各メンバーのアドリブ回し→テーマという構成は、ひとつもありません。全員が同時にソロをとり、メロディとリズムを一緒に奏でているようなパフォーマンスが続きます。2台のベースが、dj hondaのターンテーブルが、強烈なポリリズムを刻みます。日野はたまにパーカッションを操る以外、ほとんどトランペットを吹きっぱなしです。指示はその場で各ミュージシャンに与えられます。日野のキューがいつ、どこで飛んでくるのか、それは神のみぞ知るところ。演奏には常に緊張の糸が張り詰められています。しかし、一方で、そのサウンドにはとんでもない自由が含まれているのです。
「あまりにも自由で、ギターを弾いているという意識すら飛んでしまう」と、小沼ようすけはMCで語っていましたが、オーディエンスの皆様も、かなりの方が別世界を旅されたのではないでしょうか。ぼくも、最後の音がやんでからしばらくして、ようやく現実に戻ったような気がしました。
公演は明日までですが、ひとつとして同じ展開のステージはないはずです。キャリア50年にしてなお、「まだ誰もやっていないことをやりたい。今はまだその途中なんだ」と語るミュージシャンが、この世にいったいどのくらいいるでしょう!
(原田 2011.7.25)
● 7.25mon.-7.26tue.
日野 皓正 -AFTERSHOCK-
coming soon