2011.08.07
ABDULLAH IBRAHIM TRIO
artist ABDULLAH IBRAHIM
公演初日リポート:ABDULLAH IBRAHIM TRIO
近年、急速に再評価が高まっているミュージシャンのひとりがアブドゥーラ・イブラヒム(旧名ダラー・ブランド)です。2010年6月にはNHKのBS2で彼のドキュメンタリー番組が放映され(カラハリ砂漠での演奏シーンは圧巻!)、久々の来日公演も大盛況。多くのファンが、ソロ・ピアノで綴られるワン&オンリーの世界に酔いしれました。そして今回は、ピアノ・トリオによる待望の「ブルーノート東京」公演です。
場内が暗くなると共に、イブラヒムがゆっくりとした足取りで登場します。「大きな人だな」と、誰もが思ったのではないでしょうか。長年にわたって古武道や八神流躰術を学んでいることも、彼の風格、威容に貢献しているのでしょう。ステージはまず、ソロ・ピアノから始まりました。「どの曲を演奏するかは、ピアノに指をおろすその時までわからない」というイブラヒム。音楽の精が彼に憑依したかのように、美しいメロディが次から次へと登場します。始まって間もないというのに、彼はすっかり演奏に没頭しています。
その後、ベルデン・ブロック(ベース)、ジョージ・グレイ(ドラムス)が加わり、トリオの演奏が始まります。もう5年近く前、ぼくがニューヨークで見たイブラヒムの6人組バンド“エカヤ”のリズム隊も、このメンバーでした。近年のイブラヒムが最も信用を寄せているベーシストとドラマーが彼らなのでしょう。ここでも、曲目はその場で決められたようです。イブラヒムが曲のきっかけとなるフレーズを出すと、すぐさま他のふたりがついていき、イブラヒムが違うモチーフを出すと、またふたりがついていくといった展開でした。曲によってはベースやドラムスのソロも聴くことができましたが、どこで彼らがソロをとるかもイブラヒムのその場の指示で決まっていたようです。
ほとんどメドレーで演奏された(曲間はなかった)ので、実際のところ何曲プレイされたのか、ぼくにはわかりません。しかし「BANYANA」、「THE WEDDING」、「ISHMAEL」等は確認できました。
日本で最も人気のあるイブラヒムのアルバムといえば、いまなお『アフリカン・ピアノ』なのでしょう。しかし、ぼくにいわせれば、あの盤におけるピアノの音は硬く、鋭く、レコード化の際にかなり加工されているように思います。本物のイブラヒムのピアノ・サウンドは、もっと優しくて暖かいのです。この音色を聴くだけでも、ライヴに駆けつける価値は100%以上あるといえましょう。
(原田 2011 8.6)
● 8.6sat.-8.8mon.
ABDULLAH IBRAHIM TRIO
●8.9tue. はコットンクラブにて公演
coming soon