2011.09.07
THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA directed by DENNIS MACKREL
artist COUNT BASIE ORCHESTRA
公演初日リポート:THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA
directed by DENNIS MACKREL
日本には「長寿の祝い」があります。61歳は「還暦」、70歳は「古希」、77歳は「喜寿」、80歳は「傘寿」、88歳は「米寿」と呼ばれます。アメリカでは、これほど細かく分かれてはいません。しかし25周年は「シルヴァー・ジュビリー」、50周年は「ゴールデン・ジュビリー」、75周年は「ダイアモンド・ジュビリー」として華々しく祝福されます。
そして、カウント・ベイシー・オーケストラは今年、みごと「ダイアモンド・ジュビリー」を迎えました。同オーケストラが、いくつかの前身バンドを経てカンザス・シティでスタートしたのは1936年のこと。第二次世界大戦後、経済的な事情で解散したこともありますが、'50年代初頭に再結成し、'84年にベイシーが他界した後も、スイングひと筋に活動を続けています。まさしく“THE WILL TO SWING”です。
ぼくが見た初日のファースト・セットでは、先ごろ亡くなったフランク・フォスターのアレンジした曲が多くとりあげられていました。フォスターは再結成後のベイシー・オーケストラ(日本では“ニュー・ベイシー”と呼ばれることが多いようですが、海外では“NEW TESTAMENT BAND”=新約聖書バンドとして親しまれています)で大活躍した才人で、ベイシー亡き後のオーケストラの2代目コンダクターでもありました。フォスターは数々の名曲をベイシーに提供しましたが、自身がサックス奏者であるだけに、サックス・アンサンブルに重点をおいたアレンジが絶品です。大ベテランのダグ・ミラー(テナー)、40年間オーケストラに所属しているというジョン・ウィリアムス(バリトン)を含む現ベイシー・オーケストラのサックス・セクションも抜群のノリでフォスターの譜面をこなしていました。現コンダクターのデニス・マクレルが「100万ドルのサックス・セクション」と豪語する見事なハーモニーを、クラブで聴く快感は、ちょっと言葉では表現できません。
プログラム後半はサド・ジョーンズ(ベイシー死後、最初のコンダクターを務めた)、アーニー・ウィルキンス、ニール・ヘフティ等の書いたアレンジが並びます。いずれも御大存命時のオーケストラに多大な貢献をした面々です。残念ながら彼らもフォスター同様、もうこの世の人ではありません。しかしその譜面を現ベイシー・オーケストラが演奏しても、あのくつろぎ、コクのあるブルース・フィーリングが沸き起こるのですから嬉しいものです。
過日、デニスはこう語ってくれました。「私はこのオーケストラのリーダーだとは思っていない。単なる指揮者で、リーダーはあくまでもカウント・ベイシー。彼の魂がバンドをまとめている。良くない演奏をしてしまったら、ミスター・ベイシーに顔向けできない。だから皆、常に最高のプレイを心がけているんだ」。
こんなに素晴らしい息子たち、孫たちを持って、天上のベイシー翁もさぞゴキゲンな気分なのではないでしょうか。
(原田 2011 9.6)
● 9.6tue.-9.9fri.
THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA
directed by DENNIS MACKREL
coming soon