2011.11.13
DIANNE REEVES
artist DIANNE REEVES
公演初日リポート:DIANNE REEVES
いきなり昔話で恐縮ですが、ぼくがジャズを本格的に聴き始めて数年たった頃(1980年代半ばのことです)、注目の新人としてデビューを飾ったのがダイアン・リーヴスでした。
初めて聴いたのは確か夏のジャズ・フェスティヴァルのFM中継だったと思いますが、「なんてすごいシンガーが現れたんだろう」と驚いたことを覚えています。太く豊かな歌声、幅広い声域、狭い意味でのジャズにこだわらないレパートリー、まるで管楽器のように響くスキャット。歌いながらバンド・メンバーを紹介するところも斬新でした(もっともその後、ぼくは彼女が10年近く様々なグループでバック・ヴォーカリストを務めていたことを知るのですが)。
そのフェスティバルから間もなく、ダイアンはジャズ・ヴォーカル界の人気をダイアン・シューアと二分するニュー・スターとなり、その後カサンドラ・ウィルソンが“ふたりのダイアン”に続きました。21世紀も10年が過ぎてしまいましたが、両ダイアン、そしてカサンドラは当時よりさらに充実した活躍を繰り広げています。嬉しいものです。
そんなダイアン・リーヴスが、本当に久しぶりに「ブルーノート東京」に登場しています。アルバム・リリースも『ラヴィン・ユー(When You Know)』以来、ちょっとごぶさたですが、相変らず忙しく世界をツアーしているようで、リズ・ライト、アンジェリーク・キジョーとの合同コンサート(ミリアム・マケーバ、アビー・リンカーン、オデッタに捧げた)も大好評だったということです。今回の公演のバックはピーター・マーティン(ピアノ)、ピーター・スプラーグ(ギター)、クリス・トーマス(ベース)、テリオン・ガリー(ドラムス)という、さすがの凄腕たち。それぞれが一流のアドリブ・プレイヤーであるだけに、殆どの曲で彼らのソロも大きくフィーチャーされました。
ダイアンは、決してメロディを譜面どおりに歌うタイプのシンガーではありません。旋律は一度彼女の体内に入り、“ダイアン節”に変換されて飛び出します。マイクと口の距離のとり方にも尋常ではないこだわりがあるようで、フレーズによってはマイクを思いっきり近づけて歌ったり、別のフレーズではお腹の下ぐらいまでマイクを離して生の声を客席に届かせたりと多彩です。レパートリーも相変らずバラエティに富んでいて、サックス奏者ジジ・グライスの隠れ名曲「SOCIAL CALL」(かつてアーネスティン・アンダーソンが歌っていました)からタンゴ〜ボレロ風の「TANGO DU JOUR」、アニ・ディフランコのカヴァー「32 FLAVORS」等を楽しませてくれました。
客席はもちろん超満員。おそらく80年代当時からのファンも相当つめかけたことでしょう。今回の公演では、エンディングにユーモラスな仕掛けもあります。ミュージシャンがどのようにステージから去っていくのか。それも楽しみにしながら、いらしていただければと思います。
(原田 2011 11.13)
●11.13sun.-11.15tue.
DIANNE REEVES
●11.17thu. はコットンクラブにて公演
coming soon