2012.03.13
STACEY KENT
artist STACEY KENT
公演初日リポート:
STACEY KENT
アメリカに生まれ、英国を拠点に活躍。フランス語に堪能で、ブラジリアン・ミュージックにも造詣が深い。才色兼備の“ジャズ・ソングバード”、ステイシー・ケントが遂にブルーノート東京に登場しました。
冒頭はスタンダード・ナンバーの「IT MIGHT AS WELL BE SPRING」。冒頭の1コーラスを、ステイシーはピアノだけを伴奏に、スロー・テンポでじっくりと歌います。ここだけで観客は彼女の世界に引き込まれたことでしょう。ぼくもそうです。このままスローで続いていくのかなと思ったら、やがてボサ・ノヴァのリズムになり、ジム・トムリンソンがテナー・サックスでソロを吹き始めました。暖かな音色、流れるようなフレーズ作りは、故スタン・ゲッツが蘇ったかのようです。「まるで春のよう」というには、まだ肌寒さの残る毎日ですが、この曲ひとつでステイシーたちはクラブに春を運んでくれました。
いっぽう、やはりスタンダード・ナンバーである「THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME」では全編をスロー・テンポで聴かせました。ぼくがステイシーのライヴを見るのはこれが初めてなのですが、よく伸びる歌声、巧みなマイクの使い方、伴奏との呼吸の合わせ方のうまさ等に間近に接すると、「なるほど、これは人気が出て当然だ」と思います。
その後、ステイシーと親交の深いベストセラー作家、カズオ・イシグロが作詞した「THE ICE HOTEL」、「POSTCARD LOVERS」を続けて披露。ここでもトムリンソンがまろやかなプレイを聴かせます。彼とステイシーは公私共にパートナーシップを築いていますが、ステージ上でも本当に仲むつまじいです。「おしどり夫婦」という、最近はあまり使われない言葉を思い出しました。
この後はしばらくボサ・ノヴァ・ナンバーが続きました。ステイシーは14歳の頃にスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの共演盤『ゲッツ/ジルベルト』を聴いて以来、すっかりボサ・ノヴァに魅せられてしまったとのことです。アントニオ・カルロス・ジョビン作「DREAMER」(VIVO SONHANDO)ではギターの弾き語りも聴かせてくれました。マルコス・ヴァーリの「SO NICE」(SAMBA DE VERAO)も歌いましたが、先日ステイシーはマルコスと一緒にこの曲を歌って大感激したそうです(ステイシーは英語、マルコスはポルトガル語で)。
公演は本日まで行なわれます。人気と評価がうなぎのぼりのシンガー、ステイシーのライヴをぜひ、お楽しみください。
(原田 2012 3.12)
● 3.12mon.-3.13tue.
STACEY KENT
☆ 参考:セットリストはこちら
coming soon