2012 9.20 thu. - 9.22 sat.
RICHARD GALLIANO "PIAZZOLLA FOREVER" -20th Anniversary Tour- with special guest Naoko Terai
artist RICHARD GALLIANO
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
この2012年は、"タンゴの革命児"アストル・ピアソラの没後20年にあたります。世界各地で様々なイベントが開催されていますが、「ブルーノート東京」でも、心に迫るライヴが行なわれています。現代屈指のアコーディオン/バンドネオン奏者、リシャール・ガリアーノ率いる"ピアソラ・フォーエヴァー"によるトリビュート公演です。
ガリアーノは今から30年以上前にピアソラと初めて出会い、シャンゼリゼ劇場で行なわれたピアソラ五重奏団のコンサートに参加。1983年にはコメディ・フランセーズで上演された「真夏の夜の夢」等で共演し、その後もピアソラが亡くなるまで交流を続けました。「君は私に似ているね。私は新しいタンゴを創り、君は新しいミュゼットを創っている」とピアソラに言われたことは、ガリアーノにとって最も印象的な出来事のひとつであるそうです。
ステージには左からヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノ(客席に背中を向けて演奏)の順に並びます。そしてガリアーノは前面中央に位置し、アコーディオン(ボタン式)、バンドネオン、そしてアコーディーナ(鍵盤ハーモニカの一種)を使い分けます。メンバーは全員、黒を基調としたシックな衣装。それが赤を強調したライティングと相乗して、なんともいえない情熱的な雰囲気を生み出します。「OBLIVION」におけるハーモニーの美しさに、鳥肌が立ちました。
ガリアーノのプレイは"達人の至芸"というしかないものでした。蛇腹楽器から、どうしてこんなに人の声のような響きが出せるのか。目を疑わずにはいられませんでした。ヴァイオリンのセバスチャン・シュレルも随所にフィーチャーされていましたが、伸びのある音色、すすり泣くようなフレーズに接して、彼の存在感を改めて頭に刻み込んだオーディエンスは相当数、いらっしゃるのではないかと思います。
ガリアーノを迎えたアルバム『リベルタンゴ・イン・トーキョー』が好評のスペシャル・ゲスト、ヴァイオリン奏者の寺井尚子はプログラム後半に登場しました。いきなりデュオで「MILONGA DEL ANGEL」(天使のミロンガ)を聴かせるあたり、心にくい選曲というしかありません。「NEW YORK TANGO」からは全員のセッションになりましたが、ユニゾンもアンサンブルも"一糸乱れぬ"という表現がぴったり。"ピアソラ愛"に溢れた演奏の数々に、会場の拍手と声援が鳴りやむことはありませんでした。
(原田 2012 9.20)