2012 9.29 sat. - 10.2 tue.
CHICO & THE GYPSIES
artist CHICO & THE GYPSIES
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
すっかり「ブルーノート東京の顔」というべきミュージシャンになったチコ・ブーチキー。元ジプシー・キングスの重要人物にして、ワールド・ミュージックの超大物です。
昨年は"ザ・ジプシー・プロジェクト"という特別ユニットで喜ばせてくれましたが、今回は彼のマザーシップである"チコ&ザ・ジプシーズ"によるステージを2年ぶりに楽しませてくれました。しかし楽器編成は以前とは違います。複数のギタリスト+ひとりのベーシストで構成されていた往年のジプシーズに、ヴァイオリン、ピアノ、ドラムスが加えられた豪華版です。
当然、バンド・アンサンブルはさらに広がりをみせ、即興の割合も増しました。ジプシーズの伝統的なサウンドに、"ザ・ジプシー・プロジェクト"でフィーチャーされていたジャズ~フュージョン的側面が、ほどよくプラスされた・・・といえばいいでしょうか。これまでのジプシーズのファン、"ザ・ジプシー・プロジェクト"で新たにチコの魅力を知った方、その両者が満足できるステージだったと思います。
チコは相変らず、決して前面に出てプレイすることはありません。しかしその存在感は抜群です。他のメンバーは黒を基調としたコスチュームで登場しますが、チコは白いシャツを着ています。そして黒いギターを、やや高めに持って演奏します。そのコントラストがまた、実に粋なのです。そしてソリストやシンガーに暖かな視線を送り、オーディエンスに「We Love You」を繰り返します。 このひとことに接するだけで、「今度来たときも、絶対また行かなくちゃ」と思うファンは数知れないことでしょう。
場内は「補助椅子が間に合わないのでは?」と思ってしまうほどの超満員。3曲目が始まるころにはオーディエンスは総立ち、秋だというのに場内はカルナヴァル状態です。プログラムはとにかく、名曲、絶対どこかで聴いたことのある曲のオンパレードといっていいでしょう。チック・コリア作「SPAIN」も、あの"ジャカジャカ、ジャカジャカ"という複数のギター・カッティングでアレンジされると、100%チコ・サウンドに生まれ変わってしまいます。「MADRE MIA」の後半、だんだんテンポが速くなっていくところも、も うわかっているんだけど、いざナマで演奏されると「きたきたきたーっ!」と興奮せずにはいられません。時代劇ドラマ「鬼平犯科帳」でおなじみの「INSPIRATION」も、沁みました(ぼくは、そこに出演している女優の梶芽衣子さんを思い出しながら聴きました)。
そして改めて感心したのが、チコのレパートリーの国際性です。フランス発の「MY WAY」あり、アルゼンチン発の「LIBERTANGO」あり、イタリア発の「VOLARE」あり。かつて日本の曲を演奏したCDもありましたが、どの国の曲もジプシーズは彼ら独自の世界に染め上げてしまいます。
公演はまだまだ続きます。今日も"チコと愉快な仲間たち"は、聴き手を徹底的に楽しませてくれることでしょう。
(原田 2012 9.29)