2012 10.2 tue.
MICHEL LEGRAND Symphonic Special Night @すみだトリフォニーホール
artist MICHEL LEGRAND
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
公演初日リポート:MICHEL LEGRAND Symphonic Special Night
@すみだトリフォニーホール
「シェルブールの雨傘」、「おもいでの夏」など数々の名曲を送り出し、ピアニストとしても第一級の腕前を持つマエストロ、ミシェル・ルグランがこの6日と7日、「ブルーノート東京」に登場します。今年は生誕80年、初来日から40年というアニバーサリー・イヤーにあたります。前回以上に感動的なステージが繰り広げられることでしょう。
これに先立ち、ぼくは昨日、すみだトリフォニーホールで行なわれた「ミシェル・ルグラン シンフォニック・スペシャル・ナイト」に行ってきました。第1部は彼のレギュラー・ピアノ・トリオ、そして第2部はそこに竹本泰蔵指揮の新日本フィルハーモニーとハープ奏者のキャサリン・ミシェルが加わります。
第1部は、ルグランの"ジャズ愛"が溢れ出る内容でした。映画音楽家、指揮者として他の追随を許さない位置にあるルグランですが、そのいっぽうで、彼は『ルグラン・ピアノ』、『ライヴ・アット・シェリーズ・マン・ホール』等、ベースとドラムスだけをバックにした作品もいくつか残しています。ピエール・バウサエ(ベース)、フランソワ・レゾー(ドラムス)とのコンビネーションは、まるでひとりの人間がピアノ、ベース、ドラムスを同時に演奏しているかのように絶妙でした。マイルス・デイヴィスが出演した映画のために書いた「ディンゴ・ラメント」、ビル・エヴァンスなど数多くのミュージシャンにカヴァーされている「ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング」等、次々と名曲が登場します。ラストはオスカー・ピーターソン、アート・テイタム、ジョージ・シアリング等の物まねを含む「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」。ルグランがどれだけジャズを愛し、多くのピアニストに影響を受けて現在に至っているかが、とてもよくわかるパフォーマンスでした。
第2部は映画「シェルブールの雨傘」の挿入曲メドレーで幕を開けました。ぼくはこの映画を、かなり昔、蒲田の名画座で見ました。目をつぶって音楽に耳を傾けていると、映画の印象的なシーンが次々と浮かびます。「あの名作に音楽を提供したルグラン本人が、今、ここに来て指揮している」・・・なんとぜいたくで、ありがたいことでしょう。「愛のイエントル」と「おもいでの夏」では、公私共にルグランのパートナーであるキャサリン・ミシェルのハープが大きくフィーチャーされました。「彼女ほどハープを美しくプレイできるひとは、この世の中にいない」というルグランのMCが、決して「のろけ」ではなかったことを、この日のオーディエンスは、みんな知っているはずです。
新日本フィルハーモニーの演奏もまた、素晴らしいものでした。リハーサルの時点からルグランは彼らに絶賛を惜しまなかったとのことですが、なるほど、ここまで息がぴったりなら、何もいうことはないでしょう。マエストロとの共演は、フィルハーモニーにとっても忘れられない出来事になったのではないかと思います。
とにかくルグランは今、乗りに乗っています。10月6日と7日の公演、ぜひお楽しみに。
(原田 2012 10.2)
● 10.6 sat. - 10.7 sun. はブルーノート東京公演
MICHEL LEGRAND "80th Birthday Celebration Japan Tour 2012"