2012 10.24 wed. - 10.26 fri.
THE MANHATTAN TRANSFER
artist THE MANHATTAN TRANSFER
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
「マンハッタン・トランスファーは、今年で結成40周年なんだ。今日はおなじみの曲から、最近しばらく歌っていなかった曲までたっぷりお届けするよ。最後まで楽しんでいってくれ!」
リーダー格のティム・ハウザーがそう言うと、場内、割れんばかりの拍手と声援が巻き起こります。
マンハッタン・トランスファーの結成時期については諸説ありますが、ティムが"正式な結成"と考えているのは、あくまでもアラン・ポール、ジャニス・シーゲルが加入した1972年であるようです(シェリル・ベンティーンは78年参加)。
彼らが華やかなデビューを飾って以来、いくつもの男女混声グループが「マントラに追いつけ追い越せ」とばかりに登場しました。しかし、誰も追いつけず追い越してもいません。完璧なハーモニー、選曲の面白さに加え、マントラには抜群のエンタテインメント性があります。そしてお客さんに、「ああ、ライヴに来て本当によかった」と言わせずにはいられないホスピタリティがあります。彼らのステージは、ぼくにとってアメリカの華やかさな部分、陽気な部分そのものです。
ぼくが見た初日のセカンド・セットは、クインシー・ジョーンズ・オーケストラのレパートリーだった「MEET BENNY BAILEY」、カウント・ベイシー・オーケストラの定番「CORNER POCKET」、ライオネル・ハンプトン・オーケストラで有名な「AIRMAIL SPECIAL」等、ビッグ・バンドゆかりのナンバーが目立ちました。
あの大編成ならではの分厚いサウンドを、マントラは巧みに四声で醸しだします。たとえば「MEET BENNY BAILEY」では、原曲にあるミュート・トランペットとフルートのユニゾンをジャニスとシェリルが再現し、サックス・セクションとトロンボーン・セクションのパートをティムとアランが歌います。「CORNER POCKET」は、かつてサラ ・ヴォーンが「UNTIL I MET YOU」というタイトルでも歌っていましたが、マントラはそれとは別の歌詞を用いて、ベイシー・オーケストラの名演(1955年)に沿った歌唱を繰り広げました。
いっぽう、ポップス~ドゥーワップ系レパートリーに持ち味を発揮するのもマントラの魅力です。この日はザ・カプリスの「MORSE CODE OF LOVE」、ジャッキー・ウィルソンの「TO BE LOVED」(ア ランのソロ)等を聴かせてくれました。ほかにも、「BIRDLAND」、「ROUTE 66」、「SPAIN」と、これでもかといわんばかりに名曲が押し寄せてきます。ハーモニーのフルコースをたっぷり味わった満足感に浸りながら、ぼくはクラブをあとにしました。
(原田 2012 10.24)