2012 10.29 mon. - 10.30 tue.
CARLEEN ANDERSON SOUL TRIO featuring Rad.
artist CARLEEN ANDERSON
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
エイミー・ワインハウスをはじめ、数多くのシンガーから敬愛を受ける"ミュージシャンズ・ミュージシャン"、カーリーン・アンダーソン。
父親はボビー・バード、母親はヴィッキー・アンダーソンという、いずれもジェームズ・ブラウンと縁の深いシンガーたち。カーリーンにとってJBは叔父のような存在で、名付け親でもあるそうです。彼女は、音楽家になる使命を持って生まれてきたのかもしれません。
そんなカーリーンが7年ぶりに、ブルーノート東京に帰ってきました。リーダーとして出演するのは今回が初めてです。ステージにはピアノ、キーボード、ドラムスが並びます。ギターやベースは見当たりません。風変わりな編成、といっていいでしょう。しかしこれが、カーリーンの"ソウル・トリオ"なのです。彼女は曲によってピアノの弾き語りを聴かせ、ときにはステージ中央のスタンド・マイクで歌いました。力強く、音域の広い歌声は、バラードでも、ファンク調でも、ゴスペル調でも変わらず光り輝いています。
サポートを務めたRAD.は、リーダーとしても「コットンクラブ」に登場したことのある凄腕キーボード奏者。左手でベース・ラインを弾き、右手でソロをとります。見ていると「このひとの両手は、いったいどうなっているんだろう」と不思議になるほど、左右の手、10本の指が別々の動きをします。そして、うねるようなグルーヴを生み出すのです。
メンバー中、ただひとりの男性であるグイード・メイはヨーロッパを中心に活動するドラマー。長くピー・ウィー・エリス(彼もジェームズ・ブラウン・バンドでの活躍で著名です)のバンドで働き、ほかにもマーサ・ハイ(彼女もJB人脈)、トニー・アレン、マヌ・ディバンゴなどと共演を重ねてきました。タメの利いたバスドラの重低音は、とくにミディアム・テンポの曲で魅力的でした。
'90年代初頭、ヤング・ディサイプルズで活動していた頃の印象があまりにも鮮烈だったので、カーリーン=アシッド・ジャズというイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。しかし現在の彼女が取り組んでいるのは、カーリーン・アンダーソン・ミュージックそのものです。その"境地"に、ぜひ至近距離で触れていただければと思います。
(原田 2012 10.29)