2012 11.22 thu. - 11.28 wed. (11.26 mon. OFF)
NATALIE COLE
artist NATALIE COLE
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
現代を代表する大エンターテイナー、ナタリー・コールが今年も元気な姿を見せています。伸びやかな声、上品なステージ・マナー、語りかけるようなMC、粋なドレスの着こなし。実にエレガントです。
ナタリーのライヴには、彼女自身の歌声に加え、大きな聴き所があります。バンド・メンバーによるインストゥルメンタル・ナンバーです。この日はジョシュ・ネルソン(ピアノ)、アンソニー・ピュリッツィ(ギター)、エドウィン・リヴィングストン(ベース)、ロバート・ミラー(ドラムス)がアドリブをたっぷり交えながらスリリングなアップ・テンポ曲を届けました。アンソニーの速弾きは、"目にもとまらぬ"といった感じです。
場内が暖まってくると同時に、スター・タイムが始まります。キラキラ光る特製のマイクを持ったナタリーは満面の笑顔で「コンニチワ」といい、続いて「THE BEST IS YET TO COME」を歌います。フランク ・シナトラがとりあげたことでも知られるナンバーですが、これを"ナタリー節"で聴くのもオツなもの。サンバ風の「SUMMER SUN」、敬愛するエラ・フィッツジェラルドの持ち歌である「A TISKET A TASKET」等を、快調に歌いこなします。「日本の皆さんにまたお目にかかれて嬉しい。私はブルーノートで歌うのが大好き。お客さんが心から音楽を愛していることが伝わってくるから」というナタリーのMCが示すとおりの、誠実で熱のこもったパフォーマンスです。
中盤ではマイケル・フランクス作「TELL ME ALL ABOUT IT」、セルジオ・メンデス&ブラジル'66で有名な「LIKE A LOVER」を、しっとりと歌い上げました。そしてラスト・パートは、父親ナット・キング・コールゆかりのナンバーを集めたコーナーです。アラン・ブロードベント(ブルーノート東京には、チャーリー・ヘイデン・カルテット・ウエストの一員として出演したことがあります)の編曲を使った「YOU GO TO MY HEAD」を歌い終えた後、ステージ背後にスクリーンが登場します。客席は「ついにこの曲が来た!」と、沸きに沸きます。そうです、「UNFORGETTABLE」です。スクリーンに映し出された父ナット・キング・コールと、目の前にいるナタリーがデュエットします。熱心なファンにはすっかりおなじみの演出ですが、見るごとに新たな感銘を与えてくれるところは、さすが"本物のエンタテインメント"です。ナタリーもいつの間にか父の享年を超えてしまいました。しかし今も彼は彼女にとって永遠の目標であり、最高の男性のひとりなのでしょう。
実はセットリストの秘話を耳にしました。その日にナタリーが何を歌いたいと要望しても対応できるよう、バンドは相当な数の持ち曲を用意しているそうで、さらに昨年の公演では連日午後に新たな曲をナタリー本人とバンド全員でリハーサルし、その夜のセットリストに取り入れていたと聞きました。ジャズ、R&B、A.O.R.からハード・ロックまで、オーディエンスの雰囲気にあわせステージでチョイスされる曲目もあるそうで、各ステージでどのような演奏の披露に巡り会うか、大きな楽しみのひとつです。公演は、来週の水曜まで続きます(月曜はオフ)。
(原田 2012 11.22)