2012 12.21 fri. - 12.23 sun.
JOHN PIZZARELLI
artist JOHN PIZZARELLI
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
クリスマス・シーズンにふさわしい、心も体もホンワカと暖まるライヴが開催されています。イタリア系の伊達男、ジョン・ピザレリ(本人は「ピッツァレーリ」と発音)のステージです。
メンバー全員、スーツ姿がビシッと決まっています。CDではどちらかというとヴォーカリストとしての面が強調されているところもなくはないジョンですが、生演奏ではギター・プレイも満喫させてくれます。7弦ギターを縦横無尽に弾きまくり、コード奏法も、オクターヴ奏法も、ハーモニクス奏法も思いのまま。長い指、大きな手で、ドライヴ感あふれるフレーズを易々と弾きこなします。彼の父親は伝説の名ギタリスト、バッキー・ピザレリ。子供の頃から音楽漬けだったジョンにとって、ギターはもう、身体の一部なのでしょう。
ジョンは「声量豊かに朗々と歌いあげる」というよりは、「目の前のひとに語りかけるように、サラリと粋に歌う」タイプです。だから共通する芸風であるボビー・トゥループの持ち歌「LEMON TWIST」あたりとは、120%の相性の良さを示します。かと思えば、フランク・シナトラの人気曲「RING-A-DING DING!」も見事、ジョン・ピザレリ流に料理。もちろん威風堂々たるシナトラ・ヴァージョンも素晴らしいですが、ギターとスキャットのユニゾンで疾走するジョンの解釈も絶妙です。ピアノの後ろで聴かせるリズム・ギターも、さすがの歯切れよさでしたし、弟マーティン・ピザレリのベースも相変わらず、いい音を出しています。
中盤ではデューク・エリントン作の「IN A MELLOW TONE」と「SATIN DOLL」を快演。前者は最近、リバイバルしているのでしょうか、マッコイ・タイナーや山中千尋も「ブルーノート東京」公演でプレイしていましたね。ジョンは前半、ヴォーカル+ベース+ドラムスという編成でこなし、途中からピアノとギターが入るというユニークなアレンジで楽しませてくれました。
また後半では、ファンからのリクエストに応えて「I LIKE JERSEY BEST」を披露。"もしこの曲をザ・フーやボブ・ディランやザ・ポリスが歌ったら"というギャグでは、場内が大爆笑。ジョンは本当に愉快なキャラクターの持ち主です。かと思えば、続く「WHITE CHRISTMAS」や、アンコールにソロで演じた「POLKA DOTS AND MOONBEAMS」ではしっとりとジェントルに、二枚目路線を貫きました。ギターも歌もうまくて、ひょうきんで、しかもハンサム。天はジョン・ピザレリに二物以上のものを与えたのです。
(原田 2012 12.21 :公演初日リポート)