2012 12.24 mon. - 12.26 wed.
RITA COOLIDGE
artist RITA COOLIDGE
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
クリスマスを飾る円熟の歌声。2度のグラミー賞に輝くリタ・クーリッジが今、ここブルーノート東京で、飛び切りのステージを繰り広げています。
「WE'RE ALL ALONE」や「YOUR LOVE HAS LIFTED ME HIGHER AND HIGHER」など数多くのヒットを持つ彼女は同時に、全米チャートのポップ部門、カントリー部門、ジャズ部門、アダルト・コンテンポラリー部門に登場したことのある稀有な存在です。どんなタイプの曲もリタ節で歌いこなしてしまう、文字通りの"ザ・シンガー"といえましょうか。そんな彼女の最新作は『RITA COOLIDGE CHRISTMAS』 というクリスマス・アルバム。そこからのレパートリーも含むライヴを、目の前で届けてくれるのですから、本当に朗報です。
"ザ・デルタ・レディ、リタ・クーリッジ!"というMCに導かれて登場したリタはまず、ジャズのスタンダード曲「COME RAIN OR COME SHINE」から歌い始めました。声質はまったく違いま すが、あえてフラット気味の音を出して、そこからグリッサンド風にその音の位置に声をもっていくあたりや、繊細なマイク・コントロールに、ぼくはなぜかヘレン・メリルを思いだしました。続いては、お待ちかねの「SUPERSTAR」。カーペンターズのカヴァー・ヴァージョンでも有名ですが、もともとはリタが歌って人気を博したナンバーです。3曲目からはクリスマス・ナンバーも次々に登場します。「SANTA CLAUS IS COMING TO TOWN」はなんと、ニューオリンズ・ファンク風のリズムで解釈。"クリスマス=冬=寒い=しんみり"というイメージを裏切る、熱いパフォーマンスでした。
かつて公私共にパートナーであったクリス・クリストファーソン絡みのナンバーでは、「LATE AGAIN (GETTIN' OVER YOU)」が光りました。音楽監督も兼ねるジョン・マク ダフィーのギターも冴え渡っています。また、ドラムスのリン・コールターは「BABY IT'S COLD OUTSIDE」でドラムの席から離れ、スタンド・マイクでリタとデュエットを聴かせてくれました。「彼は素晴らしいシンガーなの」とリタが紹介した通り、かすれ気味の、実に渋くていい声をしています。リンはまた、曲によっては片手に2本のスティックを持ったり、スティックとマラカスを同時に持ったり、左手でボンゴを叩き右手でドラムスを叩く等、いろんな技でバンドを盛りあげていました。
クライマックスはもちろん、「WE'RE ALL ALONE」と「YOUR LOVE HAS LIFTED ME HIGHER AND HIGHER」。「往年のヒット曲を歌うことに飽きてしまった」というシンガーも少なくない中、今もリタは、このレパートリーを大切に歌い、待ちわびていたオーディエンスに感銘を与えています。これは本当に素晴らしいことだと思うのです。
(原田 2012 12.24)