2013 1.3 thu. - 1.6 sun.
CHARLES LLOYD NEW QUARTET
featuring JASON MORAN, REUBEN ROGERS & ERIC HARLAND
artist CHARLES LLOYD
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
新年、あけましておめでとうございます。ご愛読、本当にありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
この2013年、「ブルーノート東京」は開店25周年を迎えます。記念すべきアニバーサリー・イヤーの第1弾アーティストは、サックス奏者のチャールズ・ロイド。半世紀以上に渡って第一線に立ち続ける真のレジェンドです。クラブ内には始終、おごそかで暖かな雰囲気がたちこめていました。
ロイドが率いてきた数あるバンドの中で最も有名なのは、キース・ジャレット、セシル・マクビーまたはロン・マクルーア、ジャック・ディジョネットを従えた'60年代カルテットでしょう。しかしこの顔合わせは3年足らずで幕を閉じました。しかし現在、ロイドが率いているジェイソン・モラン、ルーベン・ロジャース、エリック・ハーランドとのニュー・カルテットは今年で発足7年目を迎えます。ロイドは親子ほど年齢の離れた共演者から大いに触発され、リズム・セクションはロイドのプレイを通じてジャズの歴史や伝統を体得する・・・ぼくは現カルテットこそ、掛け値なしにロイド史上最高のユニットなのではないかと思っています。
彼らは曲間をほとんどおかず、メドレーのように曲を連ねていきます。おそらく事前に何を演奏するかも決めていないはずです(ロイドの頭の中には青写真があるのかもしれませんが)。ロイドが簡単なモチーフを提示すると、「よしわかった」とばかりに、他のメンバーがリズムなりコードなりを打ち出します。リズム隊が定常テンポでソリストをサポートすることは、あまりありません。全員がそれぞれの体内にあるビートを感じながら、しかしそれをあえて前面に出さずに、各人のプレイに耳を傾けつつ、会話するように演奏している、といえばいいでしょうか。
ぼくは初日のファースト・セットを聴きましたが、レパートリーは本当に多彩です。'60年代カルテットの当たり曲である組曲形式の「DREAM WEAVER」があると思えば、ロイドが最も尊敬するミュージ シャンのひとりであるセロニアス・モンクが書いた「MONK'S MOOD」も演奏され、さらに賛美歌の「ABIDE WITH ME」をイントロダクションがわりに、「IT'S ALWAYS YOU」までプレイ されました。この曲、トミー・ドーシー・オーケストラをバックにフランク・シナトラが歌った'40年代のヒット・ナンバーです。ロイドはテーマ・メロディを思いっきりスローで演奏し、アドリブに入ると倍テンポで盛り上げました。高音重視の音使い、16分音符の混ぜ方など、どうしてもジョン・コルトレーンのバラード演奏を連想してしまいます。思えばロイドはコルトレーン同様、激動の'60年代の空気を吸ったひとりなのです。
演目は各セット、大幅に異なるようです(セカンド・セットでは、友人であるビーチ・ボーイズの曲も演奏されたとのことです)。テナー・サックスだけではなくフルートやタロガト(ソプラノ・サックスとチャルメラを混ぜたような音がする楽器)も聴かせてくれます。公演は6日まで続きます。レジェンドの風格と貫禄を、ぜひ目の当たりに!
(原田 2013 1.3)