2013 1.18 fri. - 1.19 sat.
KEM
artist KEM
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
現在のモータウン・レーベルを代表するアーティスト、ケム(KEM)が遂に初来日を果たしました。そもそもアジアのステージに立つのが初めてとのこと。「やっと日本に来て、君たちの前で歌うことができるよ!」と、彼は満面の笑顔で語りました。
バンド・メンバーがステージに揃った後、観客をかきわけてケムが登場します。ぼくは勝手に彼を大柄なひとだと思っていたので、「意外ときゃしゃなんだな」と思いましたが、歌のスケールは「巨大」のひとことです。彼がワン・フレーズ発するだけで、雄大なケム・ワールドに引き込まれていく感じ、といえばいいでしょうか。オープニングの「Golden Days」から、歌とバンドのアンサ ンブルはバッチリ。洒落た和音(コード)、粋なハーモニーは、ダニー・ハサウェイやカーティス・メイフィールド等、いわゆる'70年代のニュー・ソウルを現代に蘇らせたかのようです。
重量感のあるリズムを刻むロン・オーティス、2種のベースを持ち替えて体に響く低音を聴かせたアル・ターナー、オクターヴ奏法にも魅力を発揮したギターのランディ・ボウランド、まるで50年代のファッション雑誌から飛び出したようにおしゃれなキーボード奏者ブライアン・オニール、皆が一丸となってケムのヴォーカルをサポートします。ケムはワイン色のシャツに黒いネクタイ、そしてグレーのスーツ。まるで歌の主人公に扮しているかのように、曲によってしぐさが細かく変化します。
また、「Why Would You Stay」ではピアノの弾き語りも披露。
「Find Your Way(Back In My Life)」では客席に入り込んで、リフレインの部分をオーディエンスと合唱します。そして次は、彼の名前を一躍広めたといっても過言ではないヒット曲「I Can't Stop Loving You」。拍手や声援も一 段と盛大になります。予定になかった(本編で、すでに90分近い時間が経過していた)アンコールでは、チャールズ・ブラウンが'40年代に流行らせたR&Bヒット「Merry Christmas, Baby」を、ごきげんな4ビートに のせて聴かせてくれました。
MCで自ら語っていましたが、ケムはかつてホームレスで薬物中毒だったことがあるそうです。しかし今の彼は、まぶしいほど颯爽としたエンターテイナーです。公演は本日まで。次の来日も間近いことでしょう。
(原田 2013 1.18)