2013 1.20 sun. - 1.21 mon.
EARL KLUGH
artist EARL KLUGH
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
愛用のアコースティック・ギターを抱え、人気者アール・クルーがやってきました。
今でこそこの楽器を用いたフュージョン・ミュージックは当たり前になった感がありますが、その分野を開拓した人物こそ、アールです。エレクトリック・キーボードやエレクトリック・ベースを伴奏に、アコースティック・ギターがリードをとるという発想は、'70年代のジャズ~フュージョン界では画期的なものでした。そして現在も彼は、この路線のトップランナーであり続けています。
ボブ・ジェームスとアルバムを共作し、一緒に来日したこともあるアールですが、普段の彼はレギュラー・グループで活動しています。今回の顔ぶれは、2年前の来日したときと同じ。グループの結束はさらに高まり、メンバーそれぞれの歌心とチームワークの良さに彩られた内容となりました。リズム・セクションのアル・ターナー(ベース)、ロン・オーティス(ドラムス)は先日までケムのバンドでステージに立っていましたね。ケムもアールもデトロイト出身。どんなタイプの曲想にも対応できるアルとロンは、デトロイトが世界に誇るリズム・チームといっていいでしょう。
レパートリーはラテン・テイストを取り入れた「Brazilian Stomp」に始まり、'70年代からの人気レパートリーである「Vonetta」、サンプリングされたアフリカ風コーラスが異彩を放つ「Across The Sand」等。前回の来日時も芸 達者ぶりをアピールしたネルソン・ランジェルはアルト・サックス(音色も吹き方もデヴィッド・サンボーンを彷彿とさせます)、ソプラノ・サックス、フルート、ピッコロ、口笛で一人五役の熱演。アールはスタンダード・ナンバーの「But Beautiful」を無伴奏ソロで演奏し(タイトルの意味は"恋なんて、所詮こんなもの")、バート・バカラック作「I Say A Little Prayer」ではベースとドラムスをバックに、伝説の ギタリスト、ウェス・モンゴメリーを思わせるジャジーなプレイを展開しました。本編ラストは、メガ・ヒット作『Finger Paintings』の冒頭に入っていた「Dr. Macumba」。レコードの何 倍もの時間をかけ、アドリブを盛んに盛り込みながら、2013年現在の「Dr. Macumba」を大きなスケールで表現しました。
最近、初期のアルバムが999円で再発され、さらにファン層を広げているアール。彼の過去・現在・未来が一望できるような、スケールの大きなステージは、どのオーディエンスにも満足を与えてくれることでしょう。公演は本日まで「ブルーノート東京」、1月24日が「モーション・ブルー・ヨコハマ」、1月25日と26日が「コットンクラブ」です。
(原田 2013 1.20)