2013 1.25 fri. - 1.27 sun.
HOLLY COLE
artist HOLLY COLE
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
先日までキューバ出身のシンガー、ジョン・セカダが登場していた「ブルーノート東京」ですが、昨日からはカナダの歌姫、ホリー・コールが心暖まるステージを繰り広げています。
伴奏メンバーはアーロン・デイヴィス(ピアノ)をはじめとする、おなじみの面々。いつもたくさんの楽器を持ち替えるJ.J.ジョンソン(トロンボーン奏者とは別人)は、今回もテナー・サックス、バリトン・サックス、フルート、クラリネットを聴かせてくれました。どれを吹いても音色が美しく、イントロも間奏もエンディングも、何をプレイしてもサマになっています。しかも今回は、数曲で滝本尚史(トロンボーン)、川崎太一郎(トランペット)が加わりました。全身でリズムをとりながら、リッチなホーン・セクションをバックに歌うホリーは、本当に嬉しそうです。
プログラムは、昨年7月に国内発売された最新作『夜』に収められていた楽曲が中心。J.J.が楽屋からファンキーなリフをバリトン・サックスでブロウしながら登場する「Walk Away」、映画「007は二度死ぬ」のテーマ である「You Only Live Twice」、アール・クルー(先日、当店に出演したばかりです)のカヴァーでも知られる「Good Time Charlie」等を、ホリーが目の前で歌いこみます。これまでの ライヴよりも強いリズムを持ったナンバーが目立ったような気もしますが、「Take Me Home」や「Alison」ではしっとりと、バラード・シンガーとしての本領を発揮。ホリーの多彩な魅力が詰め込まれた80分を満喫いたしました。
アンコールはもちろん、彼女の名を不動のものにした「Calling You」。アーティストの中には、あえてヒット・ナンバーを再演しないひともいます。特定の曲と結び付けられるのがいやだ、という気持ちもわからないでもありません。しかしホリーは必ずといっていいほど、「Calling You」でステージを締めくくります。しかもこの曲だけピアノとベースの伴奏、つまり、あの"ホリー・コール・トリオ"時代の楽器編成を再現しているのです。今のホリーが歌う同曲は、さらに深みを増し、ヴィンテージ・ワインのような芳香を醸し始めました。今後、ホリーの「Calling You」がどう熟成を重ねていくのか。それも楽しみです。
(原田 2013 1.25)