2013 1.30 wed. - 2.2 sat.
PEABO BRYSON with special guest REGINA BELLE
artist PEABO BRYSON , REGINA BELLE
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
ピーボ・ブライソンが今年も、この季節にやってきました。彼が来日するとぼくは、バレンタイン・デイの到来、そして春が近づいていることを感じます。ピーボの来日はすっかり、自分にとって風物詩のひとつになっているのです。
大の親日家であり、フレンドリーな人柄でも知られるピーボ。今回の公演でも、日本を代表する歌い手さんがいろいろ見にこられています。あの熱いヴォーカル、会場中を笑顔にしてしまうエンタテインメント性いっぱいのパフォーマンスは、同業者からも憧れの的なのでしょう。
ピーボは大ヒット「If Ever You're in My Arms Again」を軽やかに歌い、続いてロバータ・フラックとのデュエットで記録的なセールスを示した「Tonight I Celebrate My Love(愛のセレブレイション)」 を届けます。彼と見事なハーモニーを聴かせてくれたシンガーは、クリスティ・ホワイト。ロバータのまろやかな声とはまた別の、高音のよく伸びる張りのある声がクリスティの魅力です。ぼくはロバータ版を何度も何度もラジオやCDで聴いてきましたが、クリスティの歌声は、この曲から新たな魅力を引き出していました。
スティングの「Set Them Free」も、ピーボがとりあげると更にファンキーになります。客席を回りながら、オーディエンスのひとりひとりと握手するピーボ。その間も歌は少しも乱れることなく、文字通りの熱唱が続きます。"次はスティーヴィーをやろうか"という声に続いて始まったのは、スティーヴィー・ワンダーの「Do I Do」。作者自身のヴァージョンは『ミュー ジックエイリアム』というコンピレーション・アルバムに収められていて、ぼくも繰り返し聴きまくりましたが、ピーボの声と快活な"スティーヴィー節"の相性もバッチリ。場内はこの時点で、アンコールのような盛り上がりです。
宴が佳境に入ると、歌姫レジーナ・ベルの登場です。音域の広さ、声質の太さ、巧みなフェイク(彼女は決して、同じ曲をCD通りには歌いません)に接して、ぼくは直ちにサラ・ヴォーンを思い浮かべました。「すべての子供を持つ親に捧げます」という前置きで始まった「If I Could」でバラードの真髄を示し、R&Bナンバーワン・ヒット「Baby Come To Me」ではスキャットを交えてCDよりもさらに粘っこく、グルーヴ感たっぷりに迫ってくれました。次回はレジーナの単独公演が見たい、と心から思います。
そしてラストは、もちろん「Whole New World」。グラミーに輝いた黄金コンビが歌う姿を、目の前で見ることができるのは本当に尊いことです。ふつうハーモニーを出す場合、他人に合わせるために自分の声をちょっと小さめに出しがちなものです。しかしピーボもレジーナも、持ち前の豊かな声量を思いっきり響かせながら、見事なハーモニーを作り出します。思いっきり歌って、思いっきりハモって、思いっきりファンを酔わせる。この世の中には数多くの男女デュオがありますが、声の厚みという点で、ピーボとレジーナは別格だと思います。
そしてアンコールは"これがなくちゃピーボのライヴは終わらない"といわれる「Ain't Nobody」。たくさんの女性ファンに花をプレゼントして、人気者ピーボはにこや かにステージを終えました。
(原田 2013 1.30)