2013 3.26 tue. - 3.28 thu.
TUCK & PATTI
artist TUCK & PATTI
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
開店25周年記念の豪華プログラムが続く「ブルーノート東京」に、結成35年を迎える夫婦デュオが駆けつけました。説明不要の人気者、タック&パティです。
例によってステージ上はシンプルそのもの。タック・アンドレスはアンプを使わずギターをダイレクトにPAに接続し、パティ・キャスカートは小さなスタンド(といえばいいのでしょうか)のついたマイクを持って歌います。二人の後ろに花束が置かれているのも、ライヴの醸し出すピースフルな雰囲気にぴったりです。
オープニングの「Yeh! Yeh!」は、'60年代初頭にモンゴ・サンタマリアのバンドがヒットさせたナンバー。のちにジョン・ヘンドリックス(今年91歳。先ほど、来日しました)が詞をつけ、ジョージー・フェイムのオルガン弾き語りでロック・ファンの間にも浸透しました。この賑やかな曲が、ギターとヴォーカルだけでシンプルに、しかも楽しく料理されていきます。すべての指を駆使してメロディ、ハーモニー、リズム、ベース・ラインを同時に作り出すタックのギター、ふくよかで芯の強いパティのヴォーカル。「音楽の神様が、このふたりを引き合わせたのだろう」と思わずにはいられない、相性の良さです。
その後も、空港でカルロス・サンタナと交わした会話から生まれたオリジナル「Forgiveness」、ボブ・ドロー(6月下旬に出演します!)の名曲「I've got just about everything」、伝説のトランペット奏 者クリフォード・ブラウンの定番に歌詞をつけた「Joy Spring」といったナンバーが快調に続きます。どんなタイプの歌もふたりの色に染め上げてしまう"タック&パティ・マジック"は、冴え渡るばかり。フレディ・マーキュリー(クイーン)の「 I Was Born To Love You」では場内から自然に手拍子が巻き起こりました。
後半にはファンにはおなじみ、タックのソロ・コーナーも登場。パティは「彼こそ天才、マイ・パートナー、マイ・ラヴ。私は骨の髄まで(ボトム・オブ・マイ・ボーンズ)彼を愛しているの」とタックを紹介し、ステージを去ります。この日はスティーヴィー・ワンダーの「I Wish」と、サンタナで有名な「Europa (Earth's Cry Heaven's Smile)」を演奏しましたが、蝶のように舞う指使い、何人ものギタリストが一緒に演奏しているかのようなプレイは「驚嘆」の一言しかありません。
しかもタックは、とんでもない超絶技巧を上回ってあまりある歌心も持っているのです。公演は28日まで「ブルーノート東京」、その後29日に「コットンクラブ」、31日に「モーションブルー・ヨコハマ」でも行なわれます。なにしろ35年も続くおしどりコンビ、無数にレパートリーがあります。どのセットに駆けつけても徹底的に楽しませてくれることでしょうし、複数のセットに行っても日替わりで様々な名曲を届けてくれることでしょう。
(原田 2013 3.26)