2013 6.20 thu. - 6.21 fri.
AVANT
artist AVANT
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
2000年にファースト・アルバムを発表。以来、R&B界を牽引し続ける人気シンガー、アヴァーントが新作『Face The Music』を携えてブルーノート東京に登場しています。
見かけはどちらかというとマッチョ系ですが、ヴォーカルは実に細やかでニュアンスに富んでいます。ちょっと高めの声、伸びやかな節回し、全身全霊をこめたパフォーマンスに胸が熱くならないファンはいないでしょう。アップ・テンポの曲ではステージを端から端まで動きまわり、大きな手を左右に振りながら熱唱。切ないバラードでは自身が物語の主人公になりきったかのように、歌詞の一語一句を噛み締めるように表現します。
バック・バンドの編成は2キーボード(ひとりはベースも兼任)、ドラムス、そして2バック・コーラスというシンプルなものでしたが、これもまたアヴァーントの歌声を引き立てていました。キーボードの絡みを聴いていると、ぼくは昔マヘリア・ジャクソンやアレサ・フランクリンのゴスペル系、レコードで聴いたピアニストとオルガン奏者のコンビネーションを思い起こさずにはいられませんでした。
演目はまさしく"ベスト・オブ・アヴァーント"というべきものでした。ブルーノート東京における初めてのステージに際して、彼はあらゆるファンが楽しめるよう献立を練りに練ったのでしょう。トレードマークのひとつといえるサングラスを放り投げた後、No.1ヒット「Separated」を歌い始めると会場の熱気はさらに高まります。そして敬愛するマイケル・ジャクソンのナンバーから「Human Nature」や「The Lady in My Life」も披露。アヴァーントがいかにマイケルから大きな影響を受けているかが今さらのようにわかるパフォーマンスでした。「Makin' Good Love」における艶っぽさも強く印象に残りま したし、スヌープ・ドッグと組んだヒット曲「Read Your Mind」を大ラスに持ってくるあたり、曲順の流れも絶妙です。
パフォーマンスの時間は70分ほどなので、決して長いとはいえません。しかしなにしろ殆どの曲の間奏が短め、もしくはないので実質的にはアヴァーントの歌いっぱなし。満腹感たっぷり、実に気持ちのいいライヴなのです。
(原田 2013 6.20)