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CHICK COREA & THE VIGIL 
with TIM GARLAND, CARLITOS DEL PUERTO, MARCUS GILMORE, CHARLES ALTURA, LUISITO QUINTERO

artist CHICK COREA

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


6月にスタンリー・クラーク、マーカス・ギルモアとのオールスター・トリオで来日したチック・コリアが、今度は新グループ"ザ・ヴィジル"を率いて戻ってきてくれました。

テナー・サックス、ソプラノ・サックス、フルート、バス・クラリネットを忙しく持ち替えるティム・ガーランドは、チックが'90年代に率いていた"オリジン"にも所属していた演奏家。チックがここまで長く同一サックス奏者を起用するのは、ジョー・ファレル(故人)以来かもしれません。ギターのチャールズ・アルトゥーラはスタンリー・クラークのバンドでも活躍する精鋭。エレクトリックでもアコースティックでも流麗な指使いは変わらず、チックのハイレベルな要求に見事に応えるテクニシャンという印象を受けました。パーカッションのルイジスト・クィンテーロはベネズエラの出身。コンガのような叩きものも、振りものも、スペイン系の楽器であるカホンまでも鮮やかにこなします。彼は『パーカッション・マッドネス』というタイトルのソロ・アルバムを発表していますが、まさにその名に恥じない熱い打楽器プレイです。

ドラムスのマーカス・ギルモアは現在、チックが最も惚れこんでいる鬼才といっていいでしょう。近年のチックのサウンドは、彼のドラムスなしに成立しない、といっても過言ではありません。生きる伝説といわれるドラマー、ロイ・ヘインズの孫で、4ビートを叩くときの軽やかなシンバル・ワークは、確かに祖父ゆずりです。ベースのカルリートス・デル・プエルトはキューバ・ハバナ出身。イラケレのベース奏者、カルロス・デル・プエルトの息子で、トム・ブレックラインやフランク・ギャンバレ等、チック人脈のプレイヤーとも数多く共演しています。

事前に曲目を決めてステージに臨むミュージシャンもいますが、ザ・ヴィジルは違います。チックが自らの気分や観客の反応をみて曲を選び、それにメンバーがついていきます。そして曲の間の空白がありません。アンコールを除くすべての曲がメドレー的に続きます。一服する時間がないのですから、聴くほうも、演奏するほうも、大変な緊張感です。しかしそれだけに、ステージが終わった後に訪れる快感、カタルシスは大変なものです。

ぼくが見たときは8分の6拍子のブルース・コードから始まり、スタンダード・ナンバー「It Could Happen To You」の斬新な解釈へと続き、さらにチック得意のスパニッシュ系ナンバー、ラストはファンク的な展開にもつれこみました。リーダーシップを握っているのはあくまでもチックですが、メンバー全員のソロもたっぷりフィーチャーされます。「どうだ、すごいメンバーを集めただろう!」というチックの声が聞こえてきそうな、誰もがベストを尽くしたライヴでした。公演はあさってまで続きます。

1968年、スタン・ゲッツ・カルテットで初来日して以来45年。チックはまたしても、日本で完全燃焼してくれました。
(原田 2013 9.10)

SET LIST

2013 9.10 TUE.
1st
1. HOT HOUSE
2. PORTALS TO FOREVER
3. LUSH LIFE
4. GALAXY 32 STAR 4
5. SPAIN
 
2nd
1. FINGERPRINTS
2. PLANET CHIA
3. GALAXY 32 STAR 4
4. ROMANTIC WARRIOR

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