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PATTI AUSTIN 
"The Real Me (Jazz, R&B and Soul)"

artist PATTI AUSTIN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


歌の力、声の魅力、音楽の喜びに溢れたステージでした。今もラスト・ナンバー「Lean On Me」の感動が耳から離れません。パティ・オースティンはこの曲を、思いっきりスロー・テンポで、しみじみと歌いあげました。背後ではピアノが、讃美歌のように美しいハーモニーを奏でます。

「人間、誰だって弱い。痛みや悲しみを抱えながら生きている。だけど必ず明日は来る。プライドを捨てて、ときには誰かの力を借りることも大事。なにかあったら私を頼って。あなたの生きていく力になるから」。

ぼくの拙い聴きとりではこの程度しか文字にできませんが、パティがあのコクのある歌声で、歌詞を一語一句噛み締めるように表現するのです。しかも手の届きそうな距離で。目が霞みました。このとき、彼女のハートと全オーディエンスのハートは確実に熱い握手を交わしていたと思います。「人柄がにじみ出る歌」が、確かにそこにありました。

話をライヴ冒頭に戻しましょう。バンド演奏のあと、"レディース&ジェントルメン、グラミー・アワード・ウィナー、パティ・オースティン!"というアナウンスに導かれて歌姫が登場します。豊かな声量、音域の広さ、卓越したリズム感。多くの歌手が命を投げ出しても欲しいであろう3要素をパティは最高レベルで持ち合わせています。幼い頃からのキャリアの積み重ねと、連日の鍛錬が現在の境地を創ったのです。ファンク調にアレンジされた「Smoke Gets In Your Eyes」、パティが大好きだというミュージカル「ピーターパン」からの「Never Never Land」、どの曲を聴いても、心憎いほど巧い。しかも歌詞のディクション(発音)が明瞭で聴き取りやすいので、自然と詞の世界が頭の中に広がっていくのです。

後半は自身のヒット・ナンバーが並びます。18歳のときに書いた最初のオリジナル曲だという「Say You Love Me」はCTI盤『エンド・オブ・ザ・レインボウ』に入っているヴァージョンよりも少し早めのテンポで解釈されました。なんて優しく、暖かいメロディなのでしょう。CTIの時代からもう、約35年の歳月が流れていますが、パティの歌声はお世辞抜きで歳月の流れを感じさせません。半音の取り方のうまさ、限りなく境目の少ない地声とファルセットの使い分け・・・圧巻です。ジェームズ・イングラムとのデュオで大ヒットした「Baby Come To Me」では、普段出さないような低音も使って"ひとり男女デュオ"を表現。やはりイングラムと歌い、その後トニー・ベネットやフランク・シナトラもカヴァーした「How Do You Keep The Music Playing」ではバラードの真髄というべき歌唱を聴かせてくれました。聴き手に問いかけるようなバーグマン夫妻の歌詞、ミシェル・ルグランが書いた格調高いメロディと、パティの凜とした歌声が一体となってもたらす高揚を、ぼくは忘れることがないでしょう。

公演は15日まで続きます。ファンキーな曲で思いっきり乗れるように動きやすい格好で行くのもいいでしょうし、バラードで涙がこぼれたときのためにハンカチを携帯するのもいいかもしれません。パティは全公演、「歌の力」で心を震わせてくれるはずです。

(原田 2013 10.13)

SET LIST

2013 10.13 SUN.
1st & 2nd
1. EVERY LITTLE THING
2. STAIRWAY TO PARADISE
3. LITTLE BIT OF LOVE
4. SMOKE GETS IN YOUR EYES
5. PICK YOURSELF UP
6. NEVER NEVERLAND
7. THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME
8. SAY YOU LOVE ME
9. BABY COME TO ME
10. HOW DO YOU KEEP THE MUSIC PLAYING
11. FUNNY FACE
12. LOVE WINS
13. LEAN ON ME

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