2013 11.21 thu. - 11.22 fri.
MICHEL LEGRAND
artist MICHEL LEGRAND
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
東京ドームでイギリスのマエストロが日本最終公演を開催していた頃、「ブルーノート東京」ではフランスのマエストロの初日ステージが始まりました。ピアニスト、作曲家、アレンジャー、映画音楽家、指揮者、歌手、ジャズ・ミュージシャン、俳優など数えきれないほど多くの肩書きを持つ才人、ミシェル・ルグランのパフォーマンスです。
ぼくがルグランを初めてライヴで聴いたのは2000年代に入ってからだったと思います。「シェルブールの雨傘」、「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」、「おもいでの夏」といった不朽の名曲の作者、巨匠芸術家というイメージが先行していて、見る前に緊張したことも覚えています。しかし目の前に現われたルグランは朗らかで優しそうなおじさんでした。MCもユーモアに溢れていて、終演後にとても暖かな気持ちになりました。
今回の来日でもルグランはエンジョイしながら、1曲1曲を丁寧にまとめあげていきます。昨年、すみだトリフォニーホールでの公演でも好評だった「名ジャズ・ピアニストのモノマネによるウォッチ・ホワット・ハプンズ」は今回もプレイしてくれました。ベースのピエール・ボウサゲ、ドラムスのフランソワ・レゾは不動のレギュラー・メンバー。ときにエレガントに、ときにスインギーに、ときにファンキーにと展開するルグラン・メロディに、彼らの柔軟性のあるサポートは不可欠といえます。
ルグランはまた、ピアノ演奏だけではなくヴォーカルも聴かせてくれました。公演ごとに歌のパートが多くなっているような気がしますが、「自分で書いたメロディを自分自身の声で伝えたい」ということなのでしょう。ルグランの弾き語りを、ナット・キング・コールやジョージ・ベンソンの域に並べることは正直申し上げて難しいです。しかし「歌いたい気持ち」がガンガン伝わってきます。彼の曲作りの原点には"歌"、"肉声"があるということを、改めて思い知らせてくれるのです。
ブルーノート東京への出演は本日までですが、明日23日にはミューザ川崎シンフォニーホールにも登場します。晩秋に味わうルグラン・サウンドは最高にロマンティックです。
(原田 2013 11.22)
ミシェル・ルグラン公演のセットリストは “今後ライブをご覧いただく皆様のために、当日の楽しみにしておきたい” とのアーティストの要望により、HPには掲載しておりません。