原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

世界最長の歴史を持つジャズ・バンド、デューク・エリントン・オーケストラが今年も素敵な演奏を届けるため来日してくれました。

デューク・エリントンが75年の生涯で残した楽曲は３０００とも５０００とも言われます。そのうちのいくつかは、今なお世界中の、ありとあらゆるミュージシャンにカヴァーされています。しかし本家本元は、デューク・エリントン・オーケストラの演奏です。もっとも御大デュークは1974年に亡くなってしまいましたが、バンドは一度も解散することなく、昔の名称のまま新しいコンダクターを据えて活動を続けています。本家本元、名門のプレイが目の前で楽しめるのは、いついかなるときも嬉しいものです。

オープニングから「Take The A Train」、「Black And Tan Fantasy」、「In A Mellow Tone」といった大定番が次々と続きます。しかしアレンジにはデュークが用いた往年の譜面ではなく、新たに書かれたものが使用されています。「～Fantasy」では2本のトランペットと1本のトロンボーンがプランジャー・ミュートを使ったり、テーマのサビ部分をサックス・ソリ(アンサンブル)で奏でていましたが、このアイデアはデューク存命中にはなかったと思います。ソリストではラヴィ・ベスト（アニ・ディフランコやアート・リンゼイとも共演経験のあるトランペッター）、「Isfahan」で流麗なアルト・サックスを聴かせたチャーリー・ヤングが強く印象に残りました。

後半には注目のシンガー、セシル・マクロリン・サルヴァントが登場します。名前は少々覚えにくいですが、一度彼女の歌唱を聴いてしまうと忘れられない存在になってしまうはずです。ソロ・アルバム『ウーマンチャイルド』が発売されたばかりですが、ジャッキー・テラソンのアルバム『ガッシュ』やアーチー・シェップの新作『アッティカ・ブルース・ライヴ』にもゲスト参加するなど、ミュージシャン間からの評判もとてもいいシンガーです。フレーズはとにかく滑らかでメリハリがあり、低域を優しく歌い上げるときはふとサラ・ヴォーンの面影がよぎります。この日は「Caravan」、「In A Sentimental Mood」など4曲を聴かせてくれましたが、もっと聴きたい気分になったのはぼくだけではないでしょう。26日からはコットンクラブで単独公演が行なわれますが、こちらも話題を呼びそうです。

ラストはインストゥルメンタルで「Things Ain't What They Used to Be」。日本語にすると"有為転変"という意味でしょうか。エリントン・オーケストラも約90年間、目まぐるしい変遷を重ねてきました。しかし名曲の魅力、格調、風格は少しも色あせることがありません。時代の風雪に耐え、ますます輝きを増すエリントン・メロディの世界を、どうかライヴでお楽しみください。
(原田 2013 11.23）

【東京 丸の内】コットンクラブ
●デューク・エリントン・オーケストラ公演
2013 11.25mon.
[1st]Open5:00pm Start6:30pm　[2nd]Open8:00pm Start9:00pm

●セシル・マクロリン・サルヴァント公演
2013 11.26tue. - 11.28thu.
[1st]Open5:00pm Start6:30pm　[2nd]Open8:00pm Start9:00pm