2014 3.21 fri. - 3.22 sat.
NICOLA CONTE JAZZ COMBO featuring MELANIE CHARLES
artist NICOLA CONTE , NICOLA CONTE JAZZ COMBO
新作を引っ提げたニコラ・コンテの
スピリチュアルでエモーショナルな世界
約1年ぶりにブルーノート東京に帰ってきたニコラ・コンテ。つい2日前に3年ぶりのニュー・アルバム『フリー・ソウルズ』をリリースしたばかりで、文字どおりそのお披露目公演となった。もう何度も日本のステージを踏んでお馴染みのニコラだが、今回はその新作用にバンド・メンバーを替えてきた。昨年はティル・ブレナーと共演し、新星シンガーのザラ・マクファーレンをフィーチャーしたステージだったが、そうした点で彼のライヴにはいつも今までとは違う「何か」が用意されている。今回はその新しいバンドが目玉で、特に日本初お目見えとなるシンガーのメラニー・チャールズ、アルト・サックス奏者のローガン・リチャードソンにスポットが当てられた。ニコラを含めドラムのテッポ・マキネン、ピアノのピエトロ・ルッスら昔からニコラを支えるバンド・メンバーは欧州出身で、メラニーとローガンはアメリカ出身。欧州ならではの洗練されたスタイルと、アメリカの黒くスピリチュアルなフィーリングの融合がここのところのニコラのアルバムのテーマで、今回のステージはそんなニコラの世界をそのまま表すものと言えるだろう。
オープニングは荘厳なモーダル・ジャズの「All Praises To Allah」。前作『Love & Revolution』収録曲で、レアグルーヴで評価の高いブッバ・トーマスによるライトメン・プラス・ワンのカヴァーだ。今夜のステージの方向性が伺えるスピリチュアルなムードの導入曲である。そしてメンバー紹介があり、メラニー・チャールズが登場。ダーク・スーツ姿のメンバーの中、白黒ボーダーと赤の切替しミニ・ワンピースの彼女は、一際ステージ映えする。彼女が歌う1曲目の「Soul Revelation」は、8ビートによるソウル・ファンク的なナンバー。かつての欧州ジャズのイメージからすると意外だが、『Love & Revolution』あたりからこうしたソウルフルな作品が増えているのだ。メラニーとローガンは、この『Love & Revolution』からニコラの録音に参加しており、今回のステージも新作と『Love & Revolution』からの曲が半々の割合だった。続く『Love From The Sun』は、ロイ・エアーズやノーマン・コナーズの演奏で知られる作品。それらがニュー・ソウル的なムードを持つクロスオーヴァー・サウンドであるのに対し、今度は逆に途中で4ビートへ切り替わるハード・バップ的なアレンジで演奏して新鮮だ。この曲はディー・ディー・ブリッジウォーターの持ち歌でもあり、そんなところからメラニーとディー・ディーの姿をダブらせずにはいられない。もちろん、今の円熟味溢れるディー・ディーではなく、デビューした頃の初々しい彼女にだ。そうしたメラニーの瑞々しさは、カル・マッセイ作でアーチー・シェップの演奏で知られる「Quiet Dawn」、黒人霊歌のように神秘的な雰囲気を持つ「Spirit Of Nature」といった静かなナンバーで、より際立っていた。後者はアビー・リンカーンやニーナ・シモンらの作品に通じるような歌で、ニコラが目指すスピリチュアルな世界とは、こんな作品なんだなと思う。
もう少しわかりやすい形、つまりエモーションが爆発するようなスピリチュアル・ジャズは、ランディ・ウェストンの曲にリロイ・ジョーンズの歌詞をつけた「Black Spirits」で披露される。ここではトランペットとサックスの掛け合いが圧巻だった。ちなみに、メラニーは途中でボビー・ハンフリーのようにフルートを吹く場面もあったのだが、残念ながらこれはほんの触り程度。いつか、彼女の本格的なフルート演奏も聴いてみたいものだ。重厚でディープな世界が続いた後は、「Shades Of Joy」で再びソウルフルな世界がやってくる。ジャズ・ロック調のくだけたタイプの曲だが、演奏そのものはとても熱い。ここでのローガンのハード・ブロウは、彼本来の持味なのだろう。最後の「Love And Revolution」では、今までのダブル・ベース、アコースティック・ピアノからエレキ・ベース、エレピに変えたR&B調の演奏。でも、一般的なR&Bとなるのでなく、しっかりとプレイヤーのソロ演奏もあり、ジャズの骨格を残しているところがニコラらしい。メラニーに関しては、そもそもソロ活動ではソウルやR&Bもやっているので、こうした歌では水を得た魚のようだ。一方、ニコラは正直なところメインをメラニーやローガンに譲り、バンドをバックで統率するような役割だった。つまり、ジャズ・メッセンジャーズにおけるアート・ブレイキー的な役割。今回も新しい才能をいかに盛り立てられるか、そこにライヴの焦点があったように思う。
アンコールは2曲で、「Goddes Of The Sea」は新作でホセ・ジェイムズが歌っていたが、今回はメラニーが歌う。メラニーは実際にアルバムで自身が歌った曲と共に、このようにアルバム内ではほかのシンガーが歌っていた曲もステージで歌い、本当にこの公演で大活躍だ。もう1曲はスタンダードの「Sometimes I Feel Like A Motherless Child」。もともとブルース色の濃い黒人霊歌だが、ここではゴスペル・タッチのR&B調でカヴァーしていた。実はこれ、キャスリーン・エメリーというマイナー歌手が1970年頃に歌ったヴァージョンにそっくり。レア・グルーヴやクラブ・ジャズ・シーンでとても人気が高い1曲で、このアレンジもDJのニコラならではのアイデアなんだなと、思わずニヤリ。最後は客席の手拍子も交えて大いに盛り上がって終わったのだが、ややそのエンジンの掛かりが遅かったかなという印象。初日のファースト・ステージだったので、まだ手探りのところがあったと思う。恐らく2日目の22日、モーションブルー横浜での23日のステージは、メラニーやローガンももっとバンドに馴染み、良くなっているのではないだろうか。そんな予感を抱かせるアンコールだった。
text : 小川充
音楽評論家・ライター。雑誌のコラムやCDのライナーノートの執筆、有線の選曲やコンピレーションの監修を手掛ける。主著は『ジャズ・ネクスト・スタンダード』『スピリチュアル・ジャズ』『ハード・バップ&モード』。
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●NICOLA CONTE JAZZ COMBO featuring MELANIE CHARLES
モーション・ブルー・ヨコハマ公演
2014 3.23sun.
2014 3.21 FRI.
1st | |
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1. | ALL PRAISES TO ALLAH |
2. | SOUL REVELATION |
3. | LOVE FROM THE SUN |
4. | QUIET DAWN |
5. | SPIRIT OF NATURE |
6. | BLACK SPIRITS |
7. | SHADES OF JOY |
8. | LOVE & REVOLUTION |
9. | GODDES OF THE SEA |
10. | SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD |
2nd | |
1. | ALL PRAISES TO ALLAH |
2. | SOUL REVELATION |
3. | LOVE FROM THE SUN |
4. | QUIET DAWN |
5. | SPIRIT OF NATURE |
6. | BLACK SPIRITS |
7. | SHADES OF JOY |
8. | LOVE & REVOLUTION |
9. | SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD |
10. | GODDES OF THE SEA |