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JACK DeJOHNETTE TRIO featuring RAVI COLTRANE & MATTHEW GARRISON

artist JACK DeJOHNETTE , MATTHEW GARRISON

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ジャズ・ドラム界の重鎮、ジャック・ディジョネットが、自身の率いるバンドで来日するのは本当に久しぶりです。彼がリーダーを務めるライヴをぼくが見るのは、1990年代初頭に今は亡き原宿のジャズ・クラブで行なわれた"ジャック・ディジョネット・スペシャル・エディション"公演以来、20数年ぶり。それだけで気分が高揚してきます。

今回はジャック、ラヴィ・コルトレーン(サックス)、マシュー・ギャリソン(エレクトリック・ベース)のトリオ編成。実に興味深い顔合わせです。ラヴィの父は伝説のサックス奏者、故ジョン・コルトレーン。そしてマシューは、1960年代にジョンが率いていたバンドでアコースティック・ベースを弾いていた故ジミー・ギャリソンの息子です。ジャックはいうまでもなく大のジョン・コルトレーン・ファン。これまで、「Miles Mode」、「India」、「Central Park West」、「Spiral」などいくつものコルトレーン・ナンバーを、自身のアルバムでカヴァーしています。

ステージには左からピアノ、サックス、ドラムス、ベース、パソコンが設置されています。ドラムスのセッティングはかなり複雑で、大小さまざまなシンバルや、独特のチューニングが施されたタムが多数、並んでいます。オープニングでジャックはマレットを用いて、めまぐるしい速さでタムを叩きます。マシューはエフェクターを通した5弦ベースを弾きまくり、ラヴィはソプラニーノ(ソプラノ・サックスよりさらに高い音が出る)を軽やかに鳴らします。何拍子なのかも数えるのも不可能な演奏が心地よい緊張感を放った後、テナー・サックスに持ち替えたラヴィが、ジョン・コルトレーン好きなら誰でも知っているであろうメロディを、断片的に、やがてストレートに吹きます。ジョンの名盤『ジャイアント・ステップス』に入っていた「Countdown」です。父親のプレイをとてもよく研究していることが伝わるラヴィの吹奏、逆にビ・バップ(=モダン・ジャズ)のバックグラウンドをほとんど感じさせないマシューのソロが好対照をなします。

「今日は我々のサウンドスケイプ(音の風景)を、ぜひ皆さんに楽しんでほしい」というジャックのMCのあとに飛び出したのは、夫人に捧げた「Lydia」。つづいてジャックはドラムを離れてピアノに移り、ジョンを代表するバラード「After The Rain」を聴かせてくれました。彼は'60年代初頭、まずピアニストとしてジャズ界に入り、その後ドラムに転向しました(ピアノだけを演奏したアルバムも残しています)。切れ味鋭いピアノ・タッチは、今なお健在といったところです。

公演は22日まで続きます。ラヴィのプレイは、ぼくの聴いた限り過去最高の充実度であるように感じました。もちろんジャックの神技的ドラム・プレイは見ても聴いても驚異的、マシューの超絶技巧については言うまでもありません。この興味深いトリオ・ミュージックを、ぜひ味わっていただければと思います。
(原田 2014 5.21)

SET LIST

2014 5.20 TUE.
1st
1. ATMOSPHERE
2. 7th D
3. WISE ONE
4. FLAMENCO SKETCHES
5. SEGMENT
EC. BLUES CONNOTATION
 
2nd
1. ATMOSPHERE
2. COUNTDOWN
3. ONE ON ONE
4. LYDIA
5. AFTER THE RAIN
6. SEGMENT

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