原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

デオダート、ティト・プエンテ、メル・ルイス、バディ・リッチ、ジャコ・パストリアスらのラージ・コンボやオーケストラで活躍。"フルバン"の醍醐味を知り尽くした男、ボブ・ミンツァーが自身のビッグ・バンドを率いて待望の来日公演中です。

結成から約３０年を経たミンツァー・ビッグ・バンドですが、そのサウンドはさらに深まるばかり。当初はニューヨークの精鋭が集まっていましたが、現在はニューヨークとロサンゼルスから幅広い年齢の凄腕を集め、カウント・ベイシーを彷彿とさせる伝統的ビッグ・バンド・ジャズからファンキーそのもののサウンドまで多彩な響きを生み出しています。この日のオープニングはシャッフル・ブルースの「Yeah Yeah Yeah」。ミンツァーはスーツにネクタイ姿でサックス・セクションの左端に陣取り、アンサンブルを吹きながら、適宜メンバーに指示を与えていきます。ハイノートが炸裂するトランペット・セクションの上で、サックス・セクションが見事なソリ（アンサンブル）を聴かせるあたり、サックス奏者であるミンツァーならではのアレンジといえましょう。

続く「El Caborojeno」は、ミンツァーがプエンテと一緒に演奏していた頃に出演していたナイトクラブの名前だそうです。タイトル通りラテン・フィーリング満載の曲で、マイク・スターンらとの共演で知られるボブ・マラックのテナー・サックスがフィーチャーされます。そして「Funky Fast」は、吹き込みを終えたばかりという次回作からのナンバー。今度のアルバムはサム＆デイヴの「I Thank You」、スライ＆ファミリー・ストーンの「Sing A Simple Song」、アイズリー・ブラザーズの「It's Your Thing」等のカヴァーも含む、ソウル～ファンク的な内容になるとのことです。ミンツァーはソロをとるとき、舞台中央まで移動して大いにサックスを吹きまくりました。

続いてはスペシャル・ゲスト、ニューヨーク・ヴォイセズの登場です。この共演のためにミンツァーは、今から７０年以上も前に書かれたスタンダード・ナンバーの数々に新しいアレンジを施しました。「I Concentrate On You」、「I'll Remember April」と、華麗な混声ハーモニーとビッグ・バンド・サウンドの融合が続きます。「The Way You Look Tonight」におけるミンツァーのアドリブは、ソニー・ロリンズのそれを思い出させてくれました。そして「I'll Be Seeing You」は、極め付きのア・カペラで披露されました。ヴァースから始まり、エンディングのロング・トーンまで。あまりにも美しい声の重なりに、ぼくは身を乗り出して聴き入ってしまいました。

アンコールの「Runferyerlife」は、ミンツァーがどれだけサド・ジョーンズのアレンジに敬意を表しているかがよくわかる内容でした。白熱するアドリブ、適宜挿入されるバック・リフ、ホーン・セクションとピアノがユニゾンで奏でるパート等、どれも熱くスイングしていました。そしてさらに、異例のダブル・アンコールではミンツァーとフィル・マーコウィッツ（ピアノ）がデュオで「Body And Soul」を披露。大サービスのステージに、拍手と声援が鳴りやまなかったのはいうまでもありません。

公演は２３日まで続きます。きのう聴きに行ったファンの口コミで、「各セット超満員札止め」になりそうな気がします。いかにミンツァー・ビッグ・バンドやニューヨーク・ヴォイセズが、日本のファンの前でプレイすることを楽しみにしていたかがわかる、本当に圧巻のステージなのです。
(原田 2014 11.21）

●モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン・イン・かわさき2014
@ミューザ川崎シンフォニーホール
2014 11.23sun.　Open 1:30pm Start 2:00pm
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