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NYブルックリンの精鋭たちが真っすぐに描く、アフロビート表現の今

 "アフロビート"。それは、1970年ちょい前から1990年代あたまにかけて故フェラ・クティが、ナイジェリアのラゴスから胸を張って送り出したビート・ミュージックのことを指す。市井派生の胸騒ぎ感覚とプロテスト感覚が満載の、<JBファンク+ジャズ+アフリカ>という図式も導くだろう、そのアフロビート表現の訴求力は一向に色あせず。今も世界中から、アフロビートの魔法を介そうとする集団がいろいろと出てきている。そして、1998年にNYブルックリンで結成されたアンティバラスはアフロビート表現のワールドワイドな伝搬力を明晰に示す、その動きの先鋒となるバンドだ。

 ゴリゴリ、ブリブリといった擬音をすぐに引き出させるような剛毅かつ弾力あふれる大所帯サウンドが積み上げられ、そこに逞しい管のソロや颯爽とした肉声が楔を打ち込むかのように乗せられる。混沌とした手触りと高揚感を同時に併せ持ってもいるその総体は、NYというコスモポリタン都市の喧噪を直截に映し出しもするか。

 ステージ上には、ずらり12人。見事なほど人種やルーツが散っていて、その様は何気にバンドの成り立ちの興味深さを伝えるだろう。ぼくは初日のセカンド・ショウを見た(ファースト・ショウとセカンド・ショウではがらりとかえたよう)が、披露された曲群はちゃんと起伏を持たせられていた。2012年発表の渾身のセルフ・タイトル作に入っていた「Ari Degbe(The Matalsmith Spirit)」や「Sare Kon Kon」などと共に、ひっかかりある情念を持つことで注視を受けているエチオ(ピア)・ジャズの手触りを持つ「Tattletale」、さらにはフェラ・クティの1974年曲「Alagbon Close」の思慕ある濃ゆーいカヴァーもあり。また、トーキング・ヘッズの1980年曲「Crosseyed & Painless」も彼らはイナセに取り上げた。そのトーキング・ヘッズ曲は彼らのアフリカ語彙咀嚼ファンク期に発表した曲だが、なるほどこれは着目した時点で大成功と言いたくなる。

 それから、もう一つ。いかにも音楽好きという風体の人たちが思うまま、生身の力100%という感じで楽器音や息づかいを繰り出す様は爽快にして、これぞライヴ・ミュージックの醍醐味という感慨をおおいに引き出す。そして、その奥からは澄んだミュージシャンシップの在り処が透けて見えもするわけで、それがなんとも接する者を気持ち良くさせよう。そういえば、ショウの開始時に彼らは皆で野卑&お茶目な掛け声をあげながらステージに上がったが、そこからは地に足を付けた飾らない普段着のバンドである事実があっさりと伝わり、それもポイントが高い。

 そんなポジティヴィティに溢れた音のシャワーをこれでもかと浴びせられ、終盤に入ると場内は総立ちとなる。この晩に限ったことではないが、やはりそこには、音楽にまつわる美しい光景があった。

text : 佐藤英輔
出版社勤務を経て、フリーランスの物書きとなる。グルーヴと飛躍する感覚と酔狂さがある音楽が好み。ライヴを中心に扱ったブログはこちらから

SET LIST

2015 4.26 SUN.
1st
1. HOOK AND CROOK
2. GOVERNMENT MAGIC
3. PAY BACK AFRICA
4. RAT RACE
5. CHE CHE COLE
6. SANCTUARY
EC. SLAP ME
 
2nd
1. TATTLETALE
2. ARI DEGBE
3. CROSSEYED AND PAINLESS
4. TOMBSTONE
5. SOMEBODY'S WATCHING ME
6. ALAGBON CLOSE
EC. SARE KON KON

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