LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


KAKI KING

artist KAKI KING

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


とんでもない充実感に包まれたひとときでした。

ただ音楽を聴いているのではなく、全身でアートの海を泳いでいるような気分になりました。ギターの異才、カーキ・キング久々の来日公演です。

ジョン・マッケンタイアのプロデュースで名が知られるようになって10年近くが経ちますが、音楽性は更に独特の、他に替わりがきかないものになっていてうれしい限りです。今回は最新作『The Neck is a Bridge to the Body』を携えてのライヴですが、あの幻想的な世界をさらにオーディエンスの視覚や感覚にも広げるべく、プロジェクションマッピング(建物や物体、あるいは空間などに対して映像を映し出す技術)を用いたパフォーマンスで魅了しました。

ステージには真っ白なギターが1台、ネックとボディをスタンドに固定した形で置かれています。その後、真っ白なコスチュームに身を包んだサングラス姿のカーキが登場し、そのギターを奏で、叩き、こすります。背後のスクリーンには幻想的な風景がうつり、同時にカーキのギターにも様々な情景が映し出されます。客席の明かりは可能な限り落とされ、カーキ自身にスポットライトが当たることもありません。ギターとスクリーンだけが、まぶしく光ります。

エキゾチックなベース・ライン(もちろんギターによって演奏されます)が印象的な「Carmine St.」ではニューヨークのカーマイン・ストリートの光景が映し出され、続く「Trying To Speak」では白いギターが"自分語り"をするという、通常のライヴ・コンサートではなかなかお目にかかれないであろう展開もありました。背後のスクリーンには日本語に訳されたセリフも登場していましたが、ようするに「生まれたときから孤独で回りになじめず居場所がなく常に不安だったけれど、ついに音楽に希望の光を見つけた」ギターの物語です。スクリーンに映し出される、擬人化された白いギターは、カーキ自身の半生の投影でもあるのでしょう。

ラストでカーキはようやくサングラスをとり、「今日の主人公はこのギターなの」と、ギターに拍手をうながしました。そしてプロジェクションマッピング担当者に感謝を述べました。

ギターの上限ともいえるテクニックを身につけながら、そこにとどまらず、さらに高く広い世界を目指すカーキの姿勢と、実際に出てくるサウンドや映像の美しさに、ぼくは深く打たれました。そして音楽、視覚、工学の3つすべてに興味を持つ方に、可能な限り、ぜひこのステージに浸っていただきたいと思いました。公演は本日までです!
(原田 2015 6.25)

SET LIST

2015 6.24 WED.
1st & 2nd
1. IN THE BEGINNING
2. THOUGHTS ARE BORN
3. NOTES AND COLORS
4. OOBLECK
5. ANTHROPOMORPH
6. THE SURFACE CHANGES
7. TRYING TO SPEAK Ⅰ
8. TRYING TO SPEAK Ⅱ
9. CARMINE ST.
10. ROAMING GUITAR
11. IT RUNS AND BREATHES
12. BATTLE IS A LEARNING
13. WE DID NOT MAKE THE INSTRUMENT, THE INSTRUMENT MADE US
EC1. COMET
EC2. PLAYING WITH PINK NOISE

INDEX