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ROBERT GLASPER TRIO

artist ROBERT GLASPER

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


9月27日に横浜で行なわれた「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2015」の4番手に登場、大好評を博したロバート・グラスパー・トリオ。野外公演の熱気もさめぬまま、ブルーノート東京で計2日間のギグを繰り広げています。ぼくは初日のファースト・セットに行きましたが、もちろん超満員。グラスパーのプレイはすっかり威風堂々といった感じで(ぼくは2000年代初めから見ています)、「人気が出る=多くの人々に認められると、人間というものは、こんなにも風格と余裕が増すのか」と、驚くやら嬉しくなるやらです。

別ユニット"ロバート・グラスパー・エクスペリメント"ではエレクトリック楽器も弾きまくるグラスパーですが、この"トリオ"ではアコースティック・ピアノに専念します。ベースのヴィセンテ・アーチャーは少年時代にギタリストからベーシストに転向し、サックス奏者ドナルド・ハリソンのバンドで本格的な活動を始めました。2000年からニューヨークに定住し、グラスパーのほかニコラス・ペイトンのバンドのレギュラーも長く務めています。グラスパーとペイトンの両方でプレイするのは本当に大変なことなのです。ちなみにハリソンはクリスチャン・スコット(10月来日)の叔父で、先ごろ「コットンクラブ」に出演したばかり。ヴィセンテが抜けた後、ハリソンのグループにはまだ無名同然だったエスペランサ・スポルディングが入りました。ドラムスのデミオン・リードは故ビリー・ヒギンズに師事し、2000年頃から頭角を現しました。グラスパーとのコンビネーションは約15年におよび、個人的にはインド系のサックス奏者、ルドレッシュ・マハンサッパとの共演も忘れがたいです(デミオンはマーカス・ギルモアの後任として彼のバンドに入りました)。

ベース奏者ロバート・ハーストのアルバム『Unrehurst』2部作にはド真ん中のアコースティック・ジャズに徹した時のグラスパーがいかに凄い男であるかがしっかり刻まれていますが(ドラムスはデミオンとクリス・デイヴ)、今回の公演からはジャズ~ファンク~R&Bをしなやかに遊泳しているような印象を受けました。録音しながらも最新作『カヴァード』には入れることができなかったプリンス「Sign of the Times」のグラスパー流解釈から始まり、ハービー・ハンコック作「Tell Me a Bed Time Story」へ。このあたりのつなぎは横浜公演同様です。あえてサステインを省いたような短めのトーン(文字にすると"ポン、ポン"という感じ)で迫るヴィセンテ、左手でトップ・シンバルを刻みながら右手でスネアをまさぐるデミオンとのコンビネーションは以心伝心と一触即発の両方を兼ね備えています。

ピアノによる幻想的な無伴奏インプロヴィゼーションから始まったのは、ビル・エヴァンスやキース・ジャレットも演奏した古典「Stella by Starlight」。しかしデミオンは16分音符でスネアをさすり続け、グラスパーも「これでもか」といわんばかりに楽想を拡げていきます。ここにはもう、テーマ→定常ビートとコード進行に沿ったアドリブ→テーマという展開はありません。ラストは盟友のヒップ・ホップ・アーティスト、ビラルの「Levels」。グラスパーは10本の指をフルに動かしながら、切なさを滲ませるメロディを観客に届けます。

すべての演奏が終わり、ふと時計を見ると約80分が経過していました。「いつのまに、こんなに時間が経っていたのか!」と驚くしかありませんでした。ジャズとその他のアフリカ系アメリカ人由来の大衆音楽に橋をかける現在進行形のスター、グラスパーのプレイは本日も満場のファンに感銘を与えることでしょう。
(原田 2015 9.29)

SET LIST

2015 9.28 MON.
1st
1. SIGN OF THE TIMES
2. TELL ME A BEDTIME STORY
3. STELLA BY STARLIGHT
4. THE WORST
5. IN CASE YOU FORGOT
6. LEVELS
 
2nd
1. SIGN OF THE TIMES
2. I HAVE A DREAM
3. STELLA BY STARLIGHT
4. IN CASE YOU FORGOT
5. SO BEAUTIFUL
6. SILLY RABBIT
EC. FTB

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