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JAMES CHANCE & THE CONTORTIONS

artist JAMES CHANCE

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


「Contort Yourself」が響き渡った瞬間、鳥肌が立ちました。いわゆるニューヨーク・ノー・ウェイヴの旗手にして、今なお尖り続けるカリスマ、ジェームス・チャンス&ザ・コントーションズの登場です。

パンク・ロックの歴史に名を刻むジェームスですが、いっぽうでジャズとの接点が多いことでも知られています。チェット・ベイカーに捧げたオムニバス・アルバム『Medium Cool』への参加を懐かしく思い出す方もいらっしゃるでしょうし、短期間ながらデヴィッド・マレイにサックスを習っていたこともあるようです。オープニングはサックスではなく、ピアノ演奏による「Love For Sale」。マイルス・デイヴィスやエラ・フィッツジェラルドなど数多くの伝説的ミュージシャンが演唱を残したコール・ポーターの楽曲です。譜面を見ながらピアノでフレーズを綴るジェームス、プランジャー・ミュートを用いたマック・ゴルホンのトランペットが絡みます。ぼくがマックのプレイを初めて見たのは、もう20年ほど昔、移転前のブルーノート東京で行なわれたレスター・ボウイ・ブラス・ファンタジーの公演でした。豊かな音量、ハイノートを駆使した吹奏は、今回も際立っていました。余談ですがレスター・ボウイの弟でトロンボーン奏者のジョー・ボウイは、ジェームスが第一次コント―ションズを解散した後に結成した"ジェームス・ホワイト&ザ・ブラックス"のメンバーだったことがあります。

スタンダード・ナンバー「Yesterdays」を歌ったあと、いよいよファンクとパンクとフリー・ジャズを攪拌した世界が幕を開けます。コント―ションズが30年の眠りから覚め、再び活動を始めたのは2010年のことですが、彼らがまさか「ブルーノート東京」のステージに立つとは。しかし今、目の前で、その"まさか"が行なわれているのです。「Design to Kill」、「Almost Black」、ギル・スコット・ヘロンの自作でエスター・フィリップス等もカヴァーした「Home Is Where The Hatred Is」などなど、惜しげもなくプレイされます。ピアノ、オルガン、サックスを使い分け、けいれんするようなステップを踏みながらシャウトするジェームスのかっこよさ。80年代に脚光を浴びたジャズ・バンド"マイクロスコピック・セプテット"の一員でもあった左利きのドラマー、リチャード・ドゥウォーキンのタイトな叩きっぷりも絶品でした。後半ではフランク・シナトラのヒット「That's Life」、敬愛してやまないジェームス・ブラウンの「I Don't Want Nobody To Give Me Nothing」("一切のほどこしはいらない。欲しいものは自分でドアを開けて手に入れる"という歌)、とどめとばかりに「Contort Yourself」が飛び出しました。私事ですが、ぼくはこの曲を学生の頃、「サウンド・ストリート」というFM番組で聴いて一発で好きになりました。しかし当時、自分が住んでいた田舎では、こうした洋楽のレコードが簡単に手に入るような状況ではなく、上京してようやく『Off White』を購入、朝に晩に繰り返し聴いたことを思い出します。ふつうならここで「懐かしい」となるのですが、ぼくが受けた印象は逆でした。懐かしい気持ちを吹き飛ばすように新鮮で、熱いサウンドが展開されたのです。

ジェームス・チャンスは、まぎれもなく現在進行形です。80年代を体験していないリスナーにもどんどん来ていただいて、この鋭利でギラギラした世界を味わっていただけたらと思います。公演は24日まで続きます。
(原田 2016 1.23)

Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2016 1.22 FRI.
1st
1. YESTERDAY
2. DESIGN TO KILL
3. ALMOST BLACK
4. HOME IS WHERE THE HATRED
5. DO THE SPLURGE
6. THAT'S LIFE
7. JADED
8. MELT YOURSELF DOWN
9. HELL ON EARTH
10. IT ALL DEPENDS ON THE AMOUNT
11. I DON'T WANT NOBODY TO GIVE ME NOTHING
12. KING HEROIN
13. CONTORT YOURSELF
 
2nd
1. DESIGN TO KILL
2. SAX MANIAC
3. HOME IS WHERE THE HATRED
4. DO THE SPLURGE
5. DISCO JADED
6. THE STREET WITH NO NAME
7. HELL ON EARTH
8. IT ALL DEPENDS ON THE AMOUNT
9. KING HEROIN
10. CONTORT YOURSELF
EC. I CAN'T STAND MYSELF

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