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HARVEY MASON "CHAMELEON" featuring MARK de CLIVE-LOWE, KEITH McKELLY & MILES MOSLEY @BLUE NOTE TOKYO

artist HARVEY MASON , MARK de CLIVE-LOWE

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


これだからライヴは面白い! 心の底から叫びたくなりました。名ドラマー、ハーヴィー・メイソン率いる"カメレオン・バンド"のステージです。

各メンバーが対等に個性を思う存分表出し、その瞬間に感じたこと・思ったことをぶつけあうようなアグレッシヴな展開はCDをさらに進化・発展・飛翔させたもの。グループ発足の頃のジャズ・ファンク~フュージョン的なテイストを残しつつも、ラテン、4ビートのモダン・ジャズ、さらにフリー・ジャズ、アンビエント、ミュージック・コンクレートまでも感じさせる壮大な展開は、まるでひとつのスペクタクル映画を体験しているような気分を与えてくれました。メイソンといえば、ここ四半世紀、スムース・ジャズの名門ユニット"フォープレイ"でまろやかなドラムを叩き続けています。しかしこの日の、攻めること攻めること。共演メンバーも、今回の来日ステージでさらに注目度を高めることは必至でしょう。

テナー・サックスとEWIのキース・マッケリーはデヴィッド・サンボーン、カーク・ウェイラム、ジョン・コルトレーンを敬愛する気鋭。テナーの音色はあくまでも押し出しが強く、管楽器の延長というよりはサウンド・エフェクトのようにEWIを吹きまくる姿は、この楽器をジャズ界に知らしめたマイケル・ブレッカーとは一種異なるアプローチです。マーク・ド・クライヴ・ロウは大の親日家としても知られるキーボード奏者で、日本とニュージーランドの血を引いています。ソロ・アルバムも10種を超え、2014年の『Church』ではミゲル・アトウッド・ファーガソン(5月に大型音楽イベントで来日)との熱い共演も聴くことができます。クラブ・ミュージック界の重鎮的存在でもありますが、この日はアコースティック・ピアノのアドリブ中にウェイン・ショーターの「Witch Hunt」、セロニアス・モンクの「Criss Cross」などを挿入。モダン・ジャズへの造詣も感じさせてくれました。ベースのマイルズ・モズリーは昨年のカマシ・ワシントン(彼はカメレオン・バンドの元メンバーです)公演にも同行した奏者。エレクトリック・ベースにしかできそうにないようなことも、エフェクターを駆使したウッド・ベースでやりきってしまう驚きの若手です。ディストーション・ペダル(だと思います)を踏み込んでの高速弓弾きは、へヴィー・メタル系のギター・プレイに通じる"速度と激烈の快感"があります。

いくつかの曲はメドレー形式で演奏され、またいくつかの曲では2つのモティーフが交互に現れる"混合曲"としてプレイされます。若きメイソンがハービー・ハンコックの名盤『ヘッド・ハンターズ』で叩いた「Chameleon」はもちろん登場しますし、ハンドクラップを用いたアレンジでフリーキーかつダンサブルに盛り上がるマイルス・デイヴィスの古典「So What」は天上のマイルスに聴かせたいほど斬新でした。とにかくどんな曲が飛び出すか、それがどんな展開となり、どうひとつのステージを構成していくか。それはまさに、そのときライヴに居合わせた者だけが知ることのできる特典なのです。

テクノロジーを使った、ハードコア・サウンド。これが今年のカメレオン・バンドです。フォープレイのファンにも一見をおすすめしたいですし、今の西海岸のジャズ関連サウンドのヤバさに目を丸くしているリスナーにも大推薦します。公演は本日まで「ブルーノート東京」、8日と9日は「コットンクラブ」で行なわれます。
(原田 2016 4.6)


Photo by Makoto Ebi

●HARVEY MASON "CHAMELEON"
featuring MARK de CLIVE-LOWE, KEITH McKELLY & MILES MOSLEY
2016 4.8 fri., 4.9 sat. コットンクラブ
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