原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

年末年始のブルーノート東京を熱狂の渦に巻き込んだジャズ・ファンク集団"インコグニート"。その総司令官、ブルーイが別プロジェクト"シトラス・サン"を率いて来日中です。

どちらもハッピーこのうえないサウンドを届けてくれますが、シトラス・サンの音作りはインコグニートよりもじっくり聴かせる曲が多くてメロウな感じ、インストゥルメンタル曲の割合も高めで、ラテン・テイストが隠し味に使われているのも特徴かもしれません。MCはブルーイが担当しますが、演奏面で最も大きくフィーチャーされていたのは英国のギタリスト、ジム・マレン。'60年代に演奏活動を開始し、ブライアン・オーガーのオブリヴィオン・エクスプレスやアヴェレイジ・ホワイト・バンド等に在籍、モーズ・アリソンやジョージー・フェイムとの共演歴もある重鎮です。'80年代に彼がサックス奏者ディック・モリシーと組んでいた"モリシ―・マレン"をFMで聴いたのが個人的には初めてのマレン体験ですが、それから30年を経て、親指弾きによる粒の揃った優しい音色がライヴで楽しめるのは大変な喜びです。

「People Of Tomorrow」では、そのマレンとブルーイのかけあいも聴くことができました。普段はカッティングに魅力を示すブルーイが鋭いトーンをソリッド・ギターから放ち、フルアコ・ギターを用いたマレンはジャジーなフレーズでそれに応えます。ソリストとしてのふたりを堪能させてくれた後、いよいよ本日のスペシャル・ゲストが紹介されます。"ザ・レジェンド！"というブルーイの声に導かれ、フルートを持った小柄な女性がステージに登場します。そうです、あの1970年代のブルーノート・レコード、通称BNLA時代にひときわ輝いた"フルートの妖精"ボビ・ハンフリーです。ライオネル・リッチーの「Hello」をプレイした後、大先輩のフルート奏者ハービー・マンの大ヒット曲「Comin' Home Baby」ではヴォーカルも披露しました（ボブ・ドローの書いたものとは別の歌詞で歌っていました）。彼女が一度ステージから去った後は、マレンが大活躍する「Soul Eyes」。モダン・ジャズ系のピアノ奏者マル・ウォルドロンが'50年代に若きジョン・コルトレーンのために書いたバラードですが、シトラス・サンはこの曲をラテン・フュージョン風なアレンジで楽しませてくれます。

フィーチャリング・シンガーであるイマーニは、アレサ・フランクリンの代表曲「Rock Steady」で場内を熱狂させ、ふたたびステージに戻ってきたボビは最も人気のある彼女の持ち曲の一つである「Harlem River Drive」をプレイします。ブルーイが「ハウス・ビートでアレンジしたんだ」という通り、'70年代のとろけるようなオリジナル・ヴァージョンとは180度異なるダンサブル仕様。場内は総立ち、90分に及ぶステージが終わってもしばらく拍手と声援がやみませんでした。

とにかく賑やか、華やかなステージです。公演は16日まで続きます。
(原田 2016 4.14）

Photo by Tsuneo Koga