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BENNY GOLSON QUARTET

artist BENNY GOLSON

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


リヴィング・レジェンド、健在です。この1月に87歳を迎えたテナー・サックス奏者、ベニー・ゴルソンが新作『Horizon Ahead』を携えて来日しています。

共演メンバーは'90年代からゴルソンのレギュラー・ピアニストを務めるマイク・レドン、そして新たにボブ・マグナッソン(ベース)、ジョー・ファーンズワース(ドラムス)が加わりました。マグナッソンはアート・ペッパーとの来日経験('78年)もあるベテランで、ゴルソンとは'70年代から断続的に共演しています。ファーンズワースは、日本ではなによりもエリック・アレキサンダーの盟友として知られていることでしょう。彼のプレイは、ビリー・ヒギンズ、フィリー・ジョー・ジョーンズ等、'50~'60年代のモダン・ジャズ・ドラマーを分析・研究した跡を感じさせます。リズム隊が変わったことでサウンドはより軽やかとなり、1曲あたりの演奏時間も適度に抑えられるようになり(前のバンドでは、どの曲でも長尺のベース・ソロが挿入されていた記憶があります)、結果として多彩なプログラムが1つのステージの中に盛り込まれることになりました。

「Along Came Betty」、「I Remember Clifford」、「Whisper Not」など数えきれないほどの名曲を書いてきたゴルソンですが、ぼくが見た初日のセカンド・セットで演奏された自作は「Blues March」、「Stablemates」など少数で、どちらかというと他人の書いた曲が多く取り上げられました。オープニングは「Sweet Georgia Brown」。いわゆるスウィング・ジャズの時代によくとりあげられたスタンダード・ナンバーですが、なにしろ1925年に作られた楽曲です。今ではこの曲を知らない現役ジャズ・ミュージシャンも多いのではと思います。こうした"昔、有名だった曲"を2016年に持ち出して、洒落たセンスで楽しませてくれるのもまた、ゴルソンの粋なところといえるのではないでしょうか。

プログラム中盤では、「いちばん好きな作曲家だ」としてデューク・エリントンの名を紹介、彼の数あるオリジナル曲の中から「Mood Indigo」を演奏しました。エリントン・オーケストラがこの曲をプレイするときは大概、クラリネットやトロンボーンが重厚なハーモニーを創り出すのですが、ゴルソンはテナー1本で妖艶なメロディ・ラインを紡ぎます。「今の彼は、他者の書いた曲を自分流に再生することが楽しくてしようがないのだろうな」、ぼくはそう感じました。

公演は5日まで、1日の休みもなく続きます。「ブルーノート東京」には何度も登場しているゴルソンですが、今回のバンドは格段にタイトです。そのせいかゴルソンの吹奏も若返ったように感じられます。今まで彼のライヴを体験したことがある方も、まだ聴いたことのない方も、今となっては希少な"モダン・ジャズの香り"を味わう絶好の機会といえましょう。
(原田 2016 5.2)


Photo by Takuo Sato


☆5.5thu. こどもの日の1stショウは、小学生/中学生/高校生の皆さまはミュージック・チャージが半額となる特別公演「Jazz for Children」を開催!
ご予約/お問い合わせはお電話で (ブルーノート東京 : 03-5485-0088)

SET LIST

2016 5.1 SUN.
1st
1. HORIZON AHEAD
2. WHISPER NOT
3. TAKE THE "A" TRAIN
4. MY FUNNY VALENTINE
5. I REMEMBER CLIFFORD
6. TINY CAPERS
7. NOW'S THE TIME
 
2nd
1. SWEET GEORGIA BROWN
2. BLUES MARCH
3. MOOD INDIGO
4. STABLEMATES
5. LAMENT
6. Mr. P.C.
7. NIGHT SHADE
8. NOW'S THE TIME

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