2016 5.20 fri., 5.21 sat., 5.22 sun., 5.23 mon., 5.24 tue.
AN EVENING WITH PAT METHENY with ANTONIO SANCHEZ, LINDA OH & GWILYM SIMCOCK
artist ANTONIO SANCHEZ , PAT METHENY
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
パット・メセニーの新バンド、ついにワールド・プレミアです! 5月16日と17日の名古屋ブルーノート、18日の大阪サンケイホールブリーゼに続き、きのう20日からブルーノート東京公演が始まっています。この新バンドにかける意気込みはこちら(https://www.bluenote.co.jp/jp/news/features/7383/)に掲載されていますが、まさにその言葉通り、一瞬も気の抜けない充実したライヴでした。
共演メンバーは10数年来の演奏仲間であるメキシコ出身のアントニオ・サンチェス(ドラムス)、アジア系の女性ミュージシャンであるリンダ・オー(アコースティック&エレクトリック・ベース)、英国生まれのグウィリム・シムコック(ピアノ)という気鋭たち。国籍やカテゴリーにとらわれない仲間たちと風通しの良い音楽を一貫してクリエイトしてきた、そして常にネクスト・ジェネレーションに注目しているパットならではの人選といえましょう。ステージはまず、パットのピカソ・ギターによる独奏からはじまりました。42弦が張られた楽器はいつ見ても「不思議な形だな」と思いますが、ギターとシタールと琴が一緒になったような音色は、実に神秘的です。6本の弦が張られたネックの低音部分を左手で押してベース・ラインをつくり、楽器の右下(客席から見ると左下)にある12弦部分を右手でかき鳴らすパートは圧巻でした。
曲が終わる頃、3人のメンバーがステージに合流し、いよいよバンドによる演奏が始まります。オープニングは「So May it Secretly Begin」。1987年の大ヒット・アルバム『スティル・ライフ(トーキング)』の楽曲が、まさかのアコースティック・ジャズとして生まれ変わります。パットはエレクトリック・ギターに持ち換えます。とくに人気の高い1曲である「Have You Heard」では、グウィリムのソロもフィーチャーされました。今は亡きジョン・テイラー(個人的にはケニー・ウィーラーやノーマ・ウィンストンと組んだ"アジマス"というグループが忘れられません)に学んだという凄腕で、ぼくにとってはジョン・エスクリートと並ぶ現代UKジャズ・ピアノのホープですが、軽やかな指さばきと鋭利なハーモニーが一体となったプレイは「さすが」の一言。この来日公演でグウィリムの名前はさらに日本の音楽好きに広まることでしょう。続いては、70年代からパットを聴いているファンには特に嬉しく響くであろう「Sirabhorn」。あの初代パット・メセニー・グループ、つまりライル・メイズやマーク・イーガンがいた頃のレパートリーです。ここではリンダのベース・ソロも味わうことができました。ぼくは彼女の初アルバム『Entry』(2009年リリース)をトランペット奏者アンブローズ・アキンムシーレ目当てで購入、同時にリンダのプレイにも惹かれました。エスペランサ・スポルディングを筆頭に、ジュリア・ヴァッレ、ブランディ・ディスターヘフトなどアコースティック・ベースを(も)弾くジャズ系女性ミュージシャンは少なくありませんが、リンダのしなやかな指使い、流れるようなフレーズづくりも実に魅力的です。
プログラム後半でギター・シンセサイザーに持ち替えてアグレッシヴに弾きまくった後、パットは椅子に座り、アコースティック・ギターを手に取ります。無伴奏ソロです。その指先が紡ぐのは「Minuano(68)」と「Last Train Home」のメドレー。壮大なオーケストレーションが施されていた"パット・メセニー・グループ"の楽曲を、1本のギターでシンプルに綴ります。名曲の骨格に触れた気分でした。と同時に、今後のライヴではどんな曲がどんなアレンジで飛び出すのか、パットと他のメンバーとの丁々発止がいかに発展していくのか、さらに興味が高まりました。ブルーノート東京には24日まで登場、25日には新宿文化センターでも公演があります。
(原田 2016 5.21)
Photo by Takuo Sato
●AN EVENING WITH PAT METHENY
with ANTONIO SANCHEZ, LINDA OH & GWILYM SIMCOCK
【東京 新宿】新宿文化センター
2016 5.25 wed. Open 6:30pm Start 7:00pm
オフィシャル・サイト:
coming soon